FAQ 賃貸管理トラブル集

借主からの居住権の主張

建物賃貸借契約の借主が賃料を2ヶ月分滞納したことから「建物を退去してほしい」との話をしたところ、「私には居住権があるから退去する必要はない」との回答があった。この借主の回答に法律上の根拠はあるのか。
債務不履行による解除が認められれば、当該借主の回答に法律上の根拠はない。

家賃滞納の場合の延滞利息の制限はあるか。

消費者契約に該当する個人が借主の住宅賃貸借では14.6%以下。それ以外については、利息制限法等を勘案し、暴利とならない程度に設定すべき。

賃料債権の消滅時効は、契約が継続している場合でもありうるのか

賃料債権は、特約がない限り月ごとに発生し、月ごとの賃料債権につき、その支払時期から消滅時効が進行する。これは、契約が存続していようが消滅・終了していようが同様である。

家賃滞納者が拘留されている場合、どのような対処をしたらよいか

借主が拘留されている警察署に面会にいき、当該賃貸借契約の合意解約及び残地物の所有権放棄についての書面を交わすべきである。

強制執行の方法

未払い賃料について少額訴訟を提起して勝訴判決に基づいて強制執行した場合、当該建物の中にある借主の所有物件を破棄する事はできるのか。
建物明渡しについての勝訴判決に基づく強制執行と異なり、金銭債権についての勝訴判決に基づく強制執行においては、「当該建物の中にある借主の所有物件を破棄すること」はできない。

賃料増額の合意以降の滞納

建物賃貸借契約について、貸主と借主が賃料を3万5000円から3万6000円に増額する事に合意して書面を作成したが、借主は従前の賃料金額しか支払わない。①当該賃貸借契約の解除はできるか(なお、賃料の未払いはいまだ3カ月分には満たない。)②賃料の未払い分を回収手段はあるか。
①について、賃料の一部不払いが継続している事になるが、賃貸借契約の解除は賃料の3カ月分相当の金額の未払いが解除の際の目安となることからすると、賃料の未払いがいまだ3カ月に満たない本件では、貸主は賃貸借を解除する事は難しい。②について、支払催促を申し立てるという方法はあるが、強制執行可能な財産を把握しておかないと実効性は担保されない。

家賃滞納を複数回繰り返している。契約解除は可能か

過去の裁判例では、滞納が繰り返されたケースで2ヶ月滞納でも解除を認めた例がある。したがって、過去の実績、現在の滞納期間及び催告に対するリアクション、将来に向けての資力回復の余地を総合的に考慮した上で解除することは可能であると考える。

家賃滞納による契約解除 (本人が刑事事件で拘留の場合)

家賃滞納があり本人との連絡がとれず、保証人とも連絡が取れないため、契約を解除し、明渡しを求めようと考えている。ところが借主本人が刑事事件で拘留されていることが借主の親族からの情報で判明した。どのように対応すべきか。
既に家賃滞納があり、解除の実質要件もそなえていると考えられることから、弁護人が選任されているのであれば弁護人を通じ、あるいは接見をして、解除ないし合意解約を取り付け、あわせて中の物の処分方法についても取り決めをして対応する。まずは親族に、弁護人の有無等や、接見可能かなどを確認の上対応されたい。

家賃滞納で、借主が当該物件を使用している様子もない場合

賃料を未払としている建物賃貸借の借主と連絡をとれなくなった。また、借主が建物に戻ってきている様子もない。
このような場合においても、借主に対し、建物の明渡しを求める場合、契約解除の意思表示からする必要があるのか。
借主が貸主に対し、当該建物の占有を移転したとの事情がないことから、貸主は借主に対する契約解除の意思表示からする必要がある。なお、貸主が契約解除をしないで建物の鍵交換等を行った場合、原則として法律上許されない自力救済に該当する可能性がある。