FAQ 賃貸管理トラブル集

第三者による損害における責任所在

建物賃貸借の借主の鍵がボンドで固められて開かなくなってしまった。借主に個人的な怨恨がある者の仕業である可能性が高いが証拠がない。この場合、鍵の交換費用を借主に請求することができるか。

貸主の義務

建物賃貸借の借主の鍵がボンドで固められて開かなくなってしまった事については貸主・借主にも法律上の故意ないし過失はあるとはいえない。とすれば、借主に対し、建物の使用・収益される義務を負っている貸主が鍵の交換費用を負担することになると思われる。

借主の破産による契約の帰趨

貸倉庫の借主が、本年8月に破産した(なお、債権者集会は本年12月10日とのこと)が翌9月分の賃料の入金があった。①この賃貸借契約の帰趨をおしえてほしい。②(仮に賃貸借契約が終了する場合)借主が倉庫に設置したタンクの原状回復を求める事はできるのか。(契約書にも賃貸借契約終了時、借主がタンクを処分するとの条項がある。)

通常は破産管財人が

①について、借主が破産したとの事情のみでは倉庫の賃貸借契約は終了しない。したがって、当該賃貸借契約は存続している。ただし、借主の破産管財人が倉庫の賃貸借を解除してくる事はある。(破産法53条)今後、破産管財人が即時解約をするか否かについては、破産管財人に電話等をしてきいてみるべきである。②については、通常、破産管財人がタンクの原状回復をすることとなるが、破産管財人が保管している破産会社の費用が潤沢出ない場合は、事実上、貸主が費用を拠出して原状回復をせざるを得ない場合がある。

契約後、建物の損耗による借主からの解除による損害賠償

事業用物件で、医院が借主。8月に契約をし10月に契約開始としていたところ、漏水事故が発生して、借主から契約を解除したいと申し出があり、賃貸借契約上支払われてた金銭はすべて返還する事にしたが、借主から開業準備に要した費用をすべて負担せよとの請求がなされている。どのように考えるべきか。

損害論と因果関係論

この問題は、契約が履行できない事による損害賠償の範囲の問題である。まずは借主からの損害の具体的な内容を証拠に添えて提示してもらう必要がある。(損害論)また、そもそも漏水によって、契約が不能になったか、それとも修繕工事によって一般的には契約可能となったかを確認するとともに、前者の場合、具体の損害と契約継続不能との間に因果関係があるのかも検討する必要がある。(因果関係論)また、後者の場合には逆に空室が発生することにより貸主側の損害との相殺の問題も考え得る。したがって、この問題の解決にあっては、借主側の一方的な要求をこたえるのではなく、上記論点を勘案し、協議をしていくことになるだろう。ただかなり専門的なところもあるので調停等で対応する事も考慮すべきではないか。

ペット不可からペット可物件へ変更する場合

現在、賃貸人との賃貸借契約にはペット飼育禁止条項を入れている。しかし、この度、本件建物をペット飼育可能物件としたい。法律上の問題はあるか。
ペット飼育禁止条項は、借主に対し、ペット飼育禁止義務を負わせるものであり、本件建物をペット飼育可能の物件にすることについては問題ない。ただし、本件建物についての賃貸借契約がペット飼育禁止となっていることを理由として借りた人もいないとは限らず、ペット飼育可とした場合、その借主との関係で問題になる可能性がある。そのため、後々トラブルを防止の観点から、本件建物をペット飼育可の物件にすることを、各借主に説明し、かつ、同意書を受領しておくことが望ましい。

契約当初なかった抵当権についての説明義務

賃貸借契約締結時に賃貸借契約の対象物件に抵当権が設定されている場合、業者は重要事項説明として、本物件に抵当権が設定されている事実を借主予定者に説明する。一方、賃貸借契約締結時には設定されてなかった抵当権が更新時には締結されている場合がある。この場合、業者は賃借人に対してその時点において、本物件に抵当権が設定されている事を説明しなくても問題はないか。

業者の責任はない。

賃貸借契約締結時に抵当権が設定されている場合、抵当権が実行されてしまうと、同賃貸借契約は同抵当権に劣後する事から、借主は本物件から立ち退きを余儀なくされる場合がある。一方、賃貸借契約締結時に抵当権が設定されていない場合には、賃貸借契約更新時に抵当権がが設定されていても、同賃貸借契約は同抵当権に優越することから、同抵当権が実行されたとしても借主は本物件から立ち退く必要はない。したがって、賃貸借契約締結時に設定がなかったが、更新時に抵当権の設定があった場合、その後、抵当権が実行されても、法律上は、借主に不利益は生じない。したがって、本件の場合は業者が説明しなくても法律上の問題は生じないといえる。ただし、更新時に物件に抵当権が設定されている事を借主に伝えてあげるのが親切であろう。

旧民法395条(短期賃貸借)について

抵当権設定前に締結された賃貸借契約は旧民法395条の適用がなく、抵当権が実行されても、同賃貸借契約が更新される限り、借主は退去する必要がない。一方、抵当権設定後に締結された賃貸借は、旧民法395条の適用により、借主は、短期賃貸借期間満了時までは退去する必要がないが、同期間満了時には退去しなければならない。

契約書と重要事項説明書が異なった場合どちらが優先

契約書が優先する。ただし、重要事項説明と異なる内容であるため、借主への情報提供が不十分として一定の条項につき無効ないし不存在と評価される可能性がある。

自己所有の物件を仲介し場合の仲介手数料は

自己所有物件の賃貸は仲介ではないので、仲介手数料の受領はできない。

未成年が借主で、本人との契約をし、連帯保証人が両親。この契約は有効か

未成年者本人の契約で、親権者の同意がない場合でも、契約自体は有効に成立する。(ただしあとから取り消しが容易に認められる。)また、この場合、親権者が連帯保証人となっており、連帯保証契約の際、未成年である借主が契約する事を前提に保証契約をしている以上、その保証契約の中に、未成年者の賃貸借契約に係る同意の意思表示も含まれていると解することもかのうであろう。したがって、本件の場合、有効な契約として扱って問題ないと考えるが、今後は、連帯保証契約とは別に、親権者の同意書もとっておくことが無用なトラブルの回避の観点から望ましいと考える。