Column
コラム
敷き引き特約を有効とした最高裁判例
賃貸借契約におけるトラブルで一番多いと思われるのがこの敷引きによるもので、貸主側としてはたいへん頭の痛いものであったと思います。それに追い打ちをかけた消費者契約法10条に該当せず敷き引きが有効とされた判例を紹介します。平成14年より保証金100万円(うち預託金40万円、敷き引き60万円と特約)契約期間2年間で賃料17.5万円のち第1回目の更新時に17万円と変更後、2回目の更新後に契約が終了した。貸主が60万円を差し引き返還したところ上記特約は消費者契約法10条により無効として借主が敷き引き分の返還を求めた事案です。
これを有効とした裁判所の判断は、以下の内容を述べて消費者契約法10条に該当せず返還する必要はないとしました。
①貸主が契約の条件として敷き引き特約を定め、借主がこれを明確に認識したうえでの賃貸借契約に至ったのであれば、貸主借主双方の経済的合理性を有するとみなす。②敷き引きの額が賃料の額等に照らし高額にすぎるなどの事情があれば格別、そうでない限り、これが信義則に反して消費者である借主の利益を一方的に害するものということはできない。③賃料における敷き引きの額が3.5倍程度にとどまり高額すぎると言い難くまた、近傍同種の相場と比して大幅に高額であるとも伺えない。上記のような判例が出たことで次のような注意が必要となってきました。負担等つき借主が明確に認識したと評価されるような契約書の記載が必要であり、また金額についても単に賃料との比較だけでなく、近隣相場との比較などの調査も必要です。上記のような3.5倍が有効だと認識しないことです。