FAQ 賃貸管理トラブル集

女性専用賃貸住宅の男性入居(使用)トラブル ・・・・対処方法とは

女性専用賃貸住宅の男性入居(使用)トラブル ・・・・対処方法とは
賃貸住宅の賃貸借契約では、賃貸人がどのような態様で物件を賃貸するかは契約自由の原則により、

人権侵害に当たるような場合でない限り、原則としては賃貸人が自由に取り決めることができます。

人権等の差別の問題はデリケートなラインですが、女性専用にすることは賃貸物件の差別化、

防犯性等の向上を図るなどの観点から有効かと考えます。

そして、今回のようなトラブルの場合は契約条項などを根拠に事実確認をし、賃貸借契約に基づきその是正を図るように

賃借人に求めることになります。この時に注意しなければならないのが、当事者が同居者を男性であることを認めない場合です。

そうなるとそれ以上の確認は難しくなります。

そのような問題を解決するために、「女性専用・男性との同居禁止」と記載するのではなく、「同居人の追加制限」を条文に入れておくことをお勧めします。

賃貸人様と賃借人様のそれぞれの負担について (修繕負担について)

賃貸住宅を賃借人様が退去されるときに、入居時の状態に戻して明け渡すことが原則となります。

賃貸住宅のトラブルに関する相談でお問い合わせ頂く事がありますが、
その中でも多いのが原状回復に関するものが半数を占めております。
原状回復とは?ですが、、、
国土交通省のガイドラインでは原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、
賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と難しい言葉で定義しておりますが、
要は、賃貸住宅を賃借人様が退去されるときに、入居時の状態に戻して明け渡すことが原則となります。
ただし、通常暮らしていると経年劣化による損耗等については賃貸人様の負担になります。
この経年劣化と賃借人様の責任になる破損の違いがトラブルになっております。
今回は賃貸人様・賃借人様の修繕負担について良くある質問を表にしております。
賃貸人様・賃借人様との健全な関係の為に参照ください。

賃借人の負担にならないもの/賃借人の負担となるもの
【床(フローリング・畳・カーペット等)】
負担にならない:
* 畳の表替え・裏返し(破損なし、新規募集のため)
* 家具設置による床・カーペットの凹み・設置跡
* フローリングの色落ち(日照・構造欠陥による雨漏り等)
* フローリングのワックスがけ
負担となる:
* 引越作業等によるひっかき傷
* 飲み物をこぼしたことによるシミ・カビ(手入れ不足)
* 賃借人の不注意による雨の吹き込み等での色落ち
* 冷蔵庫下の錆等の跡(放置による汚損)

【壁、天井(クロス等)】
負担にならない:
* ポスターや絵画の跡
* 電気ヤケ(テレビ・冷蔵庫の後部)
* 画びょう・ピン穴(下地の張替え不要レベル)
* 賃借人所有エアコンによるビス穴・跡
* クロスの自然変色(日照など)
負担となる:
* 清掃を怠った油汚れ(キッチン等)
* 結露放置によるカビ・シミ(通知や手入れをしなかった場合)
* クーラーの水漏れを放置して腐食させた場合
* タバコのヤニ・臭い
* 壁等の釘穴・ねじ穴(重量物をかけた等で下地張替え必要)
* 天井に直接照明器具を取り付けた跡
* 落書き等、故意による毀損

【建具等、襖、柱等】
負担にならない:
* 網戸の張替え(破損なし、新規募集のため)
* 地震によるガラス破損、網入りガラスの自然な亀裂
負担となる:
* ペットによる柱等のキズ・臭い
* 落書き等の故意による毀損

【設備、その他】
負担にならない:
* 専門業者によるハウスクリーニング(通常清掃済みであれば)
* エアコン内部洗浄(喫煙等の臭いがない場合)
* 消毒(キッチン・トイレ)
* 浴室等の取り換え(破損なし、新規募集のため)
* 鍵の取り換え(破損・紛失なし)
* 設備機器の故障(経年劣化によるもの)
負担となる:
* ガスコンロ置き場・換気扇の油汚れ(清掃怠りによる)
* 浴室・トイレ等の水垢・カビ(手入れ不足による)
* 不適切な使用・手入れによる設備毀損
* 戸建て賃貸・庭付き物件の雑草放置

無断転借による責任は賃借人も義務を負う!?

義務を負うとした判例があります。

この判例は最高裁平成17年3月10日の判決されたものです。

さて、その事案とは。

【概要】

土地の貸主をAとします。

そのAは県の許可を得て産業廃棄物最終処分場として使用しておりましたが、その使用を中止して、

Bに資材置き場として賃貸し、Cがその連帯保証人となりました。

その後、BはDに無断転貸をしました。

そのDはその土地を産業廃棄物処理場として使用し廃棄物を投棄し始めました。

そこで貸主Aは無断転貸及び用法違反として契約を解除し、Bから明渡しを受けました。

しかし!投棄された産業廃棄物はそのままでした。

そこで、Aは連帯保証人のCに原状回復義務の不履行として損害賠償を求めた事案です。

この場合はAの請求は認められるのでしょうか。

【裁判所の判断】

①賃借人Bは賃貸借契約上の義務に違反する行為により生じた賃借物件の毀損について、

原状回復義務を負うことは明らかである。

②Bは無断で転貸し、Dが不法に産業廃棄物を投棄したのだから、

Bは原状回復と産業廃棄物を撤去すべき義務を免れることはできない。




ここで補足と注意を!

まず、そもそも貸主に無断で転貸借をすることは違法です。

では、貸主に転貸借の承諾をとっている場合はどうなのでしょうか。

この場合は、転借人も正当な当事者となりますので、原状回復義務に関してもその利用態様に応じて、

借主とは別に考えられます。トラブルを防ぐためにも転貸借の承諾時や賃貸借契約締結時に、

転貸借における特約を定めておく必要があります。

そして、もうひとつ重要な補足を。

今回の事案は連帯保証人への請求でした。

当然、連帯保証人も賃借人と同様の債務を弁済する義務はあります。

ただし、2020年に施行される改正民法では極度額を定めなければ効力を生じないとされます。

(極度額は連帯保証人が負うべき債務の上限です。)

このような多額の債務が想定される契約では、賃貸借の目的等を考慮して極度額もしくは敷金等の金額を設定すべきです。

賃貸人様、原状回復は元通りにすること、ではありませんよ!

原状回復=賃借開始時の状態のように元に戻すことではないということです。

賃貸物件のトラブルとしていつも上位にあるのが原状回復と保証金(敷金)の返還等についてです。

原状回復という意味を賃貸人様によっては違った解釈をさせている方がいるかと思います。

これについては賃借人様も同様で、きちんと理解されていないと保証金(敷金)の返還や原状回復のトラブルに発展致します。

1998年に国土交通省の原状回復のガイドラインが定められ、2004年、2011年に見直され、
2020年4月の民法改正の中でも条文の追加があり、より多くの皆様に認知されてきていると思います。

基本的な考えでは、ガイドラインで認められたもの以外は保証金(敷金)は返還しなければなりません。

そして大事なのは、原状回復=賃借開始時の状態のように元に戻すことではないということです。
(経年劣化は原則賃貸人様の負担です。)

トラブルを少しでもなくすために、例を作っております。

退去の業務は長年の賃借人様と賃借人様のご縁の締めです。

お互いに感謝の意をもって終わりたいですね。

ペット飼育可能の賃貸物件…ひっかき傷や糞尿による腐敗は通常損耗!?

ペット飼育可能の物件にした場合、どこまでが通常損耗で、費用負担はどうなるの?

ペット飼育ルールに反し、配慮も怠っているキズや汚れは、 「通常使用を超える使用」「善管注意義務違反」による損耗と判断されるので借主の原状回復の対象となります。


ある不動産をペット飼育可能として賃貸募集することをオーナー様にご提案させて頂いた際にこんな質問がでました。

ペット飼育可能の物件にした場合、どこまでが通常損耗で、費用負担はどうなるの?

きっと、多くのオーナー様が不安に感じていることではないでしょうか。

私も実際に2匹の犬がいるのですが、飼っている側と飼っていない側の考え方は大きな温度差があると思います。

ペット飼育可能の物件だからと言ってどのように飼育してもよいというわけではありません。

規約等で決まっていることはもちろんのこと、飼っている方は善管注意義務の内容として一定のルールがあります。

そして、ペットを飼育しているからこそ、日常的な清掃等は特段の配慮が必要となります。

では原状回復ガイドラインではどのような見解なのか。

①建物価値の減少にあたる損耗等を経年劣化

②通常使用に伴う損耗を通常損耗

③借主の故意過失・善管注意義務違反による損耗

この3つのうち、①、②を貸主で③を借主としています。

では、ペット飼育可能の条件で貸したのであればペットによるひっかき傷や糞尿は通常使用では??と

借主様から主張されますよ!と質問がありました。

しかしガイドラインのもとでは、ペットを飼育する一般的な使用を基準にすると上記の件は、

ペット飼育ルールに反し、借主として求められる配慮も怠っているキズや汚れは、

「通常使用を超える使用」「善管注意義務違反」による損耗と判断されるので借主の原状回復の対象となります。

それでも、何をもって「通常使用」なのか、その線引きは難しいものです。

その為にも、通常使用の内容や善管注意義務違反の内容を具体化しておくことが大事です。




弊社では、個々の物件や賃貸条件に応じて具体的なルールや設備等の利用方法や

注意事項などを盛り込んだ、「○○マンション 入居のしおり」を作成し、

「通常使用」の内容や善管注意義務を具体化しトラブルを防いでおります。

そして、このような使用細則を賃貸借契約書の中でも遵守させておくことが効果的です。

設備の故障とその期間の家賃の取り扱いは??

合理的な理由もなしに相当期間修繕を実施しない場合は、賃料減額がなされると考えてよいかと思います。

コロナ禍の影響で半導体の流通が厳しい状況の中、賃貸借契約にも大きな影響を与えております。

身近なところでは給湯器、ウォシュレット等です。

このような設備は基本的には賃貸借契約における賃貸物(設備)として取り扱われておりますので、

通常に使える状態であるのことが賃料に値するとの考え方が民法の規定するところです。

※民法611条1項「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益出来なくなった場合において、それが賃借人の責めに

帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。」

しかし、給湯器が壊れたことにより直ちに民法の規定に当てはまるのではありません。

賃貸人は賃貸物の使用収益に必要な修繕をするべき義務があります。その修繕義務があるのにもかかわらず、合理的な理由もなしに相当期間修繕を実施しない場合は

上記の規定に基づき、賃料減額がなされると考えてよいかと思います。

ですから、仮に給湯器が壊れてしまい、修理に一定の期間かかってしまった場合でも当然に賃料を減額とはなりません。

ただし、給湯器が故障したことによって賃借人様の生活に支障が生じていますので、代替え措置、もしくはその期間賃料の一部免除などの対応が必要に応じてするほうが良いでしょう。





賃貸借契約における不誠実敵対的な態度

賃貸借契約は相当長期に及ぶことが予定されるものですから、信頼関係は大変重要なものです。

建物の賃貸借契約の解除には賃貸借契約の継続を著しく困難にするような背信行為があることが必要です。

賃借人と賃貸人との信頼関係を破壊し、今後の賃貸借契約の存続を困難にするものとはどういうものでしょうか。

賃貸借契約は相当長期に及ぶことが予定されるものですから、信頼関係は大変重要なものです。

信頼関係の中には賃借人としての義務もあります。

まず、賃料支払い義務、用法順守義務、物件保管返還義務、無断譲渡転貸しない義務等です。

だだ、上記の義務を違反したからと言って即時に契約を解除できないのも、賃借人を保護するものとしてある借地借家法です。

判例でも賃借人に契約違反があった場合であっても、賃貸借契約の継続を著しく困難にするような背信行為がある場合に限って、

賃貸借契約を解除できるとしています。

それでは、2つの解除事案と賃貸人の権利についての事案をご紹介させて頂きます。




1、賃借人の長期無断不在と協調性の欠如

賃借人は防犯、防災、衛生の保持等に努めて善良なる管理者の注意義務を遵守するために、長期不在の場合には賃貸人に伝え、

賃貸人もしくは管理者はその状況を踏まえて維持管理することが必要であるにも関わらず、賃借人の非協力的な態度、協調性の欠如等で

信頼関係の修復が困難な程度に破壊されているとして、契約解除を認めています。(東京地裁平成6年3月16日判例タ877号218頁)

2、賃貸借契約から生じる債務と直接関係のない背信行為は解除原因になるのでしょうか。

判例では、賃借人が賃貸人に障害を負わせたケースで、障害行為が家屋の明渡に関連するものである上、謝罪・損害賠償を全くせず、

さらにその後、賃貸人に承諾なく造作設備の建築等の事情があるときは、契約上の義務違反と評価し無催告解除を認めた例があります。

(最高裁昭和43年9月27日判タ228号95頁)




3、建物保存のために必要な工事でも、賃借人は保存が不要と考えて協力しない場合があります。

これは当然には契約違反とは言えないとも考えられますが、賃貸人は建物の保存に必要な行為があれば、賃借人の意思に反して工事を

行うことが出来ます。この場合、賃貸人は賃借人の占有部分に入り工事をするときは、仮処分申請をする必要があります。

ただし、これは今後の信頼関係を損なうこともありますので、いきなりの仮処分は避けて、話し合いをすることをお勧めいたします。

成年年齢の引き下げによる20歳未満者との契約

契約者が「未成年者」であるのか、年齢を確認することが必要となります。

これまでは、20歳未満であれば、原則は「未成年」であったので、

未成年との契約の際は親権者の同意等の必要な手続きを行えばよかったのですが、

令和4年4月1日に民法改正され、成年年齢が18歳に引き下げられたことから、

契約者が「未成年者」であるのか、年齢を確認することが必要となります。

この確認作業は重要で、本当に成年者であるのかは住民票や免許証などの公的証明書で確認することが大事です。

そして、次に申込者が18歳以上であることが確認できれば、契約についての法令の取り扱い、心構え、留意点等は、

必要以上に丁寧に説明することが大事と思います。

説明を丁寧にしたからと言っても、賃貸人の皆様にはまだまだ不安が残るかと思います。

そんな不安を少しでも解消するのであれば、親に何らかの役割を求めることが良いかと思います。

連帯保証人になって頂くなどの方法がそれに当たります。








管理業者による家財等の処分は??

賃料滞納した賃借人(入居者)が2ヶ月ほど不在。。。家財処分等を行うことは??

勝手に処分は不法行為責任が生じるが、、、、同意条項があれば

賃借人が賃料を滞納しているからと言っても、賃貸借契約の解除等が完了していない限りは契約終了、明渡が完了しているわけではありませんので、賃借物件内にある家財等の動産は賃借人の占有下にありますので、処分を行うと不法行為責任が生じます。(自力救済禁止)まずは賃借人と連絡を試み、賃貸借契約を解除したうえで、強制執行により対処することが原則です。 では、予め賃貸借契約書に処分の同意の条項があれば?これについては、東京地裁平成29年2月21日判決の裁判例が参考になります。 この事例では、賃借人と家賃債務保証会社との保証委託契約書において、インフラの利用状況、郵便物の状況等から通常の生活を営んでなかったと認めれるときは、明渡が成立したとみなすことに同意するとし、本物件に残置された家財道具等の動産類の所有権を放棄し、保証会社がこれらの搬出、運搬、処分することに何ら異議を述べないと規定されていました。ここで注意は、通常の生活を営んでなかったと認められるということです。すなわちいまだに物件をしようしていると評価できるような場合では処分を認める条項は有効ではないということです。(このような条項は、自力救済禁止の法理に抵触し、公序良俗に反し無効となります。)ですから、管理業者としては、契約書に家財処分等の同意条項があったとしても、賃借人との連絡を試み、取れなかった場合の事実を積み重ねるとともに、インフラの使用状況や物件内の状況を確認して、客観的に明渡が完了したものと評価できるかを精査するなどの慎重な対応が必要です。