FAQ 賃貸管理トラブル集

競売後に借主が競落人(新所有者)との間で賃貸借契約を締結する場合の賃料は

競売の場合、競落人(新所有者)には旧所有者(貸主)と借主との間の賃貸借契約は承継されない。したがって、競落人と借主は、旧所有者と借主との間の賃貸借契約における賃料の金額に縛られることなく賃料を決める事となる。(なお、旧所有者と借主との間の賃貸借契約を参考とすることは差し支えない。)

すべての短期賃貸借が、賃貸物件の競売によって終了するのか

平成16年4月1日より前に締結された契約(現在それが更新されている場合を含む)については、従前の短期賃貸借保護が働き、当然には終了せず、更新拒否の正当事由の中で判断される事になる。また、それ以降の契約でも、すべての抵当権者の同意の登記がある場合には、終了しない。

前貸主の口頭による承諾も継承されるのか

建物賃貸借契約について、ペットの飼育禁止条項がある。しかし、当該賃貸借契約締結後、貸主Aが借主Bに対し口頭でBが当該建物においてペットを飼育する事を認め、現在、Bは当該建物においてペットを飼育している。当該建物のオーナーがAからCに売却によって交代する場合、AがBに対し口頭で当該ペット飼育を認めた約定もAからCに承継されるか。
本件の場合、CはAとBとの間の賃貸借契約を承継する事から、AがBに対し口頭で「借主が当該建物においてペットを飼育する事を認める」約定もAからCに承継される。

借主死亡後に借主の内縁の妻が引き続き物件に入居することは可能か

借地借家法36条で、内縁の妻も居住権を承継する事ができるとされているため、当該要請に応ずべきこととなる。契約条件は従前の条件を引き継ぐのが原則である。なお、保証人がいる場合、法的には保証契約もそのまま継続する事となるが、保証人にも借主の地位の承継と、保証契約の存在とその継続につき通知しておくことが望ましい。

店舗の借主が死亡。相続人に支払い請求は可能か

店舗の借主が亡くなったが、相続人が3人いることが判明した。なお亡き借主は約6カ月間の賃料を滞納していた。貸主は相続人らに対し建物明渡し及び原状回復義務履行の請求をすることでよいか。
相続人らが相続放棄手続きをしていない場合には、貸主は相続人らに対し建物明渡し及び原状回復義務履行の請求をすることになる。しかし、本件では、相続人らが相続放棄をする可能性が高いため、貸主は相続人らに対し「相続を放棄するか」を確認し、相続人らが「相続を放棄する」場合は、相続人から相続放棄受理証明の写しを受領し、貸主側で原状回復工事をすることになる。なお、相続人がいない場合の相続財産は国庫帰属となるのが原則(民法959条)

自殺による被害の補填

管理物件で自殺者がありました。 該当する部屋の補修などで大きな被害を受けました。
入居者募集を行うにも、家賃を下げなければなりません。この減額分は自殺した借主の
連帯保証人等に請求できるか

連帯保証人への請求は、契約書や連帯保証人承諾書などに「一切の債務を...」

と記載されていれば請求できます。



ここで判例を紹介します。



【事案の概要】



賃貸人は賃借人が賃貸物の室内において自殺したことは、賃借人の善管注意義務違反にあたるとして、相続人及び連帯保証人に対して損害金676万円余を求めて提訴した。



【判決の要旨】



①賃借人の善管注意義務の範囲



賃借人が賃借中の室内で自殺したことは、賃貸借契約における賃借人の

善管注意義務に違反したものであり債務不履行を構成するから、相続人には

同債務不履行と相当因果関係のある賃貸人の損害を賠償する責任がある。



②連帯保証人の責任と範囲



連帯保証人は、本件連帯保証契約の範囲は、賃料不払いなどの通常予想される

債務に限られると主張したが、本件には、責任範囲を限定する記載はなく、かつ

「一切の債務」と記載があることから、相続人と連帯して賠償する責任がある。



③賃貸人の損害の算定



本件では本貸室を自殺事故から1年間賃貸できず、その後賃貸するにあたっても

従前賃料の半額の月額3万円での賃貸しかできず、一方、賃貸不能期間(1年)と

契約期間(2年)の経過後は、従前の賃料(6万円)での賃貸が可能であると推認

するのが相当と考えると、逸失利益は132万円余となる。



なお、本件貸室以外の部屋の賃貸に困難を生じるとは認めれないから、本件以外の

部屋に関して賃料の減収が生じているとしても、これは自殺と相当因果関係のある

損害とは認められない。





ここで注意事項です。



自殺のあった部屋以外の他の部屋を貸す場合には、

自殺事故について告知義務はないのではなく、

自殺のあった部屋の隣室を貸す場合には、

原則として説明義務があると認識ください。

賃貸マンションの居室から来訪者が転落…貸主の工作物責任は!

賃貸マンションで、居室の窓枠に手すりがなく、腰壁の高さが約40㎝しかない状況のもとで、来訪者がその窓から転落死したため、来訪者の親族が、建物所有者である貸主に対し損害賠償を請求した事案です。
裁判所は、この状況につき、建物の設置に瑕疵があるとして、所有者である貸主の工作責任を認めた。
ただし、転落した来訪者にも過失があるとして、過失相殺(7割)を認定した。

賃料の改定と敷き金額とは法律上当然に連動するのか

敷金契約と賃料契約部分は別個のものである。したがって賃料改定されても当然に敷金の増減があるわけでない。当事者間の合意のもと、合理的な取り扱いになるように検討すべき。

賃料改定につき増額幅等に制限があるのか

特に制限はなく、借地借家法の賃料増減額請求の要件に準拠して検討すればよい。ただし、例えば近隣相場が1.5倍になっているから、ただちに1.5倍とできるかについては、相手もいることであり、継続賃料の上方硬直性の傾向からもやや難しいと考える。