FAQ 賃貸管理トラブル集

返還金を借主が受領拒否した場合(訴訟を前提に)

居住用の賃貸物件を明渡し後に確認したところ、襖が10枚破れていた。この物件は、居住者が途中で入れ替わり(貸主の承諾あり、)居住者いわく前の居住者が行ったものだと主張。敷金の返還にあたり、修繕費用を差し引いて返還したいが、居住者は「銀行口座には振り込むな」として受領を拒否し、弁護士に依頼して争うとのこと。どのような対処が必要か。
振り込みで返還して何等問題ないが、相手方が明確に拒否している以上、他の方法を取りたいのであれば、内容証明郵便で受領を催告し、応じなければ受領拒否として供託するのが最終手段である。ただ、通常、相手方に弁護士が付いているのであれば、催告すれば、供託までは不要であろう。なお、居住者の変更が賃貸権譲渡の方式でなされた場合には、貸主の立場からは、前後の居住者は同一人とみなして、退去時の借主に金額を請求し、あとは居住者間で精算してもらうと考える事ができるのではないか。

敷金全額と転居費用の請求(事情による)

昨年入居した入居者Aはペット不可との条件で入居した。その2ヵ月後に隣室にペット可そして入居者が入ったが、猫を飼っているらしい。

Aは猫アレルギーなので退去したいが、敷金全額請求と転居費用を請求したいとのこと。敷金は全額返還する予定だが、転居費用まで負担しなければならないか。
ペット可・不可は入居者ごとの条件であるので、原則として応じる必要はないが、隣室もペット不可かを入居者に確認されるのは酷であり、一方で、入居時の説明の際のやりとりによってはペット不可を希望する入居者の意向を確認すべき義務があったと認定さえかねない。

アレルギーの程度にもよるが、早急に対応した方がよいと思われるので、転居費用も負担した方が穏便に解決できるであろう。

保証金償却特約

事業用の建物賃貸借契約において賃貸借契約の更新ごとに保証金を償却する特約がある。合意更新を2回した後、法定更新となって現在に至る。①法定更新の時も償却してよいか、②借主が当該建物から退去する場合の保証金残金の処理をどのようにしたらよいか。
まず、本件特約条項の文言上、法定更新の場合も償却を認める形になっているか否か、(償却を認める形になっている場合)償却の法的性格は何等を検討して判断する事になる。②について保証金残額は、未払い賃料等に充当の上、残金があれば借主に返金する事になる。

保証金の返還

店舗の定期建物賃貸借契約(5年)で、借主が貸主に対して1200万円の保証金を預けている。ところが、最近貸主の経営状態が悪化しているという噂があり、借主としては例えば、直ちに(契約期間中に)保証金を半分返還してもらいたいと思っているが、そのような主張ができるか。
貸主と借主で合意すれば、保証金の半分を返還する事も可能である。しかし、貸主の同意がなければ、借主から一方的に保証金を返還するように求める事はできない。

退去後、借主に連絡がつかない場合の敷金の返還は

3月に退去した借主。敷金につき、退去時の合意に基づき原状回復費用を精算した残額を返還しようとしたところ、連絡がつかない。退去時に教えてもらった振込口座に振り込み返却してもよいか。
返済方法につき振込みによる旨指定があった。(だからこそ口座指定があった)と評価し、振込み送金し、合わせて明細を元の住所宛に送付する。(転居届けが出ていれば転送される。)という形で当面対応したらどうか。借主から連絡があったときには、これらの措置をした旨明確に回答できるよう、書面上も記録しておくことが大切である。

保証金返還請求権に質権設定がある場合

事業用賃貸借で、保証金につき、その一部を家賃と相殺する旨の即決和解が成立した。この保証金返還請求権に銀行の質権が設定されているため、契約終了時の返還に当たっては、相殺前の金額につき銀行に返還することになるのか。
敷金の性質を有する保証金の返還請求権は、貸主、借主間の債務を相殺した後の金額につき発生するため、質権の範囲もその相殺後の金額の限度にとどまる。したがって、契約終了時には、相殺後の金額につき対応すればよい(転付命令を得ている場合には銀行に返還する。差し押さえだけであれば借主と銀行で債権者を特定するまで供託ないし返還を留保する。)

敷金の返還時期

原状回復につき、貸主側で工事等を行い敷金から差し引く場合、敷金の返還が遅れることは問題ないか。借主からは退去時に返還してくれと言われている。
敷金は借主が賃貸借契約上負うべき債務の担保であり、判例上も敷金返還と物件の退去は同時履行の関係にはないとされていることからすれば、原状回復のように費用が一定期間後に発生・確定するものについては、債務の確定に要する合理的期間であるとして、その期間分返還が遅れることは問題ないと考える。仮に即時返金を主張され、貸主もやむえなしとして応じるのであれば、代わりに担保の提供を求めるなど、後の原状回復費用の請求の際の担保措置を検討すべきであろう。

敷金の返還請求権の消滅時効

一般の債権の消滅時効と考えれるため、10年(商行為に基づくものであれば5年)となる。

返還後の費用請求

賃貸借契約終了時に敷金の精算をして、敷金を借主に返還し、オーナー宛の領収書を書いてもらい、いったん精算が終了した。ところが、その後、当該物件の排水管が詰まっていることが判明した。オーナーとしては、その補修代金を借主に負担させたいとの希望があるが、借主に負担させることはできるのか。
通常損耗でなければ、借主に負担させることができるのが原則であるが、問題は、すでに当該借主との敷金の精算が終了しているということである。排水管の詰まりが敷金返還時には発見できず、かつ、そのことが不合理でないといった点がクリアできるかを検討する必要がある。