FAQ
賃貸管理トラブル集
- 家賃の遅延損害金条項がない場合は損害金はとれないのか。
- 滞納家賃の回収方法 法的措置の前に請求債権として給与の差押えをしたい場合
- 滞納家賃の回収方法 契約解除後に明渡しを履行しない場合
- 滞納家賃の回収方法 分割払い合意後の滞納
- 滞納家賃の回収方法 催促に応じず居座っている場合
- 滞納家賃の回収方法 債権が多数の場合
- 催促の方法
- 借主と入居者の関係が親子である場合、借主の地位の承継は可能か。
- 滞納家賃等の場合、特約がない場合の遅延利息はどのくらいか。
- 借主に対する差押通知書等が貸主に届いた場合の対応
- 減額請求後の家賃
- 家賃滞納で、借主が当該物件を使用している様子もない場合
- 家賃滞納による契約解除 (本人が刑事事件で拘留の場合)
- 家賃滞納を複数回繰り返している。契約解除は可能か
- 賃料増額の合意以降の滞納
- 強制執行の方法
- 家賃滞納者が拘留されている場合、どのような対処をしたらよいか
- 賃料債権の消滅時効は、契約が継続している場合でもありうるのか
- 家賃滞納の場合の延滞利息の制限はあるか。
- 借主からの居住権の主張
- 滞納借主がいる状態での相続
- 借主が逮捕された
- 支払催促とは
- 滞納者に差押え財産有
- 滞納家賃による法的手続きで和解の場合、決められた債務に保証人をつけることはできるか。
- 契約継続の上で債務を回収したいが…
- 請求しないと支払わない関係が継続中…契約解除ないし更新拒絶は可能か
- 悪質な居座り行為
- 解除条件(滞納一ヶ月)
- 裁判による判決が出た後の回収方法
- 借主が個人契約から法人に切り替えた場合の未払い賃料の請求先
- 直接交渉を避けたい場合
- 未払い賃料をもっていきなり訴訟できるか。
- 賃料滞納者が暴力団関係者である場合
- 重なる滞納による解除通告は可能か
- 合意解約
- 家賃等の延滞利息の上限は14.6%か
- 未払賃料の遅延損害金の利率
- 訴状等の送達方法
- 催促に要する経費等を合わせて請求できるか
- 未払賃料が90万円の場合は少額訴訟制度の利用は
- 連帯保証人に少額訴訟制度で請求できるか
- 未払賃料の時効期間は
家賃の遅延損害金条項がない場合は損害金はとれないのか。
取れます。
遅延損害金の約定がある場合はその約定による遅延利息を請求できます。
(公序良俗に反する高額な約定は無効となります。)
この場合、賃貸を事業として行う場合には、消費者契約法により、未払い家賃についての
遅延損害利息は年利14.6%(1日あたり0.04%)までと制限され、これを超える部分は無効です。
もし約定がなくても、年5%~6%の割合による遅延利息を請求できます。
業としての経営でなければ5%、業としての経営ならば6%です。
遅延損害金の約定がある場合はその約定による遅延利息を請求できます。
(公序良俗に反する高額な約定は無効となります。)
この場合、賃貸を事業として行う場合には、消費者契約法により、未払い家賃についての
遅延損害利息は年利14.6%(1日あたり0.04%)までと制限され、これを超える部分は無効です。
もし約定がなくても、年5%~6%の割合による遅延利息を請求できます。
業としての経営でなければ5%、業としての経営ならば6%です。
滞納家賃の回収方法 法的措置の前に請求債権として給与の差押えをしたい場合
建物賃貸借契約借主が多額の賃料を滞納している。しかし、借主に対し建物明渡しを求める法的措置をとるには多額の費用がかかる場合があるので、まずは、滞納賃料を請求債権として借主の給与を差し押さえたい。(借主の勤務先は知っている。)いかなる方法ととったらよいか。
借主の給与を差し押さえる前提として、支払督促命令の申し立て、もしくは、訴訟の提起をして債務名義を得る必要がある。その上で、裁判所に給与債権差押えの申し立てをする。
滞納家賃の回収方法 契約解除後に明渡しを履行しない場合
家賃滞納5ヶ月分となった借主に対し、契約解除をしたところ、6月27日付けで明渡し、6月28日付けで滞納家賃を払うとの念書が送付されてきた。期日まで待つ予定であるが、仮に履行されない場合、どのように対応すべきか。
まずは念書通りの履行を促す通知をし、期日の履行状況を確認する。履行されていなければ、念書を材料に法的措置(訴訟等)を準備しながら再度履行を促す。どうしても履行しなければ訴訟で対応する事になる。また、連帯保証人を通じ、本人の対応を促すことも検討する。
滞納家賃の回収方法 分割払い合意後の滞納
家賃滞納約140万円の借主との間で債務を70万円に減額し、分割払いで弁済する旨の合意書を交わした。(ない、借主は任意で退去している。)しかし分割払いの1回目の期日が過ぎても入金はされない。どのように対応すべきか。
合意のそんざいを前提に、債務弁済の法的手続きを取って対応することになろう。この場合、貸主本人が対応するか、弁護士に依頼して対応する事になる。管理会社が代理人となることは原則できない。
滞納家賃の回収方法 催促に応じず居座っている場合
家賃滞納が1年分以上ある借主。何度も催促しているが、連絡すらよこさない。電気メーターは動いている為、いまだ居住はしていると推測される。このような物件につき、明渡しと滞納賃料支払いを求めるにはどのようにすればよいか。
基本的には契約解除通知を出して借主に到達せしめ、その後明渡しと滞納賃料の支払いの訴訟をし、判決を得て強制執行をするという段取りになる。解除通知は内容証明で行うが、念のため同一の文章を普通郵便でも送付し、到達させる。訴訟は通常訴訟手続きとなる。(少額訴訟手続きでは明渡しは請求できない)
滞納家賃の回収方法 債権が多数の場合
建物を保育園として賃借し、園関係者がその一角に住んでいる状況にある。家賃滞納が4年にも及ぶが、保育園の園児の事を思うとなかなか解約できない。なんとか滞納額の支払いを求めたいが、どのように対応すべきか。
金額が金額だけに、一括払いは困難であるので、分割払いの合意をし、公正証書にしておくことが考えられる。
また、保育料債権を差押え、転付命令を受けるということも理屈上は考えられるが、多数の少額債権なので、事務量と回収コストのほうが膨大になりかねない。したがって、いずれにしても最終的には解除を検討せざるをえないので、順次経営規模を縮小するなどの対応を借主に求めていくことも考えられる。
また、保育料債権を差押え、転付命令を受けるということも理屈上は考えられるが、多数の少額債権なので、事務量と回収コストのほうが膨大になりかねない。したがって、いずれにしても最終的には解除を検討せざるをえないので、順次経営規模を縮小するなどの対応を借主に求めていくことも考えられる。
催促の方法
建物賃貸借契約の借主が賃料を2ヶ月分滞納している。当該賃貸借契約の連帯保証人は、①借主の姉の夫と②子供であるところ、未払い賃料について連帯保証人の勤務先宛てに催促状を送っても良いか。
「嫌がらせ」と受け取られることを回避すべく、順序を踏む必要がある。すなわち、当該連帯保証人に連絡する必要があることを前提として、まず、電話ないし自宅あてに手紙を送り、次に届かなかった場合に「親展扱い」で送るべきである。
借主と入居者の関係が親子である場合、借主の地位の承継は可能か。
家賃滞納の回収の為に少額訴訟を検討しているが、実際の入居者は借主の親で、借主自身の現住所地は不明である。
この場合、入居者である親が借主の地位を承継したとみなして、親に請求することは可能か。
この場合、入居者である親が借主の地位を承継したとみなして、親に請求することは可能か。
借主の地位の変更ないし賃借権譲渡は、いずれも鍼灸借主間の契約と貸主の承諾等が必要であり、新旧借主間の譲渡等の契約の存在を明らかにしないと、親への請求はできない。この場合、弁護士か司法書士に依頼して借主の住所地捜査をすることも検討すべきではないか。
滞納家賃等の場合、特約がない場合の遅延利息はどのくらいか。
特約がない場合、民事法定率によるので、5%が原則。ただし、商行為と評価される場合には6%となる。
借主に対する差押通知書等が貸主に届いた場合の対応
建物賃貸借の貸主に対し税務署から借主の滞納税金を被保全債権とする敷金返還請求権の差押通知書、質問書及び回答書面のような書面が来たが、どのように対応したらよいか。
貸主は税務署に対し回答書面を必要要請を記載した上で返送すべきである。なお、借主に貸主に対する債務がある場合、貸主は敷金から当該借主の貸主に対する債務を、当該差押えに係る滞納税金に優先して控除することができる。
減額請求後の家賃
店舗の借主から賃料減額請求の通知が来て、一方的に従前の賃料の半額しか支払って来なくなった。どのように対処すべきか。
借主から貸主に対し賃料減額請求がなされた場合でも、貸主は借主に対し「減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払いを請求する事が出来る」(借地借家法32条3項)そのため、本件においては、貸主は借主に対し、従前の金額を基準とした賃料請求をして、未払賃料がおおむね3カ月程度たまった時点で当該賃貸借契約の解除をして、建物の明渡しを求めることを検討する事になろう。
家賃滞納で、借主が当該物件を使用している様子もない場合
賃料を未払としている建物賃貸借の借主と連絡をとれなくなった。また、借主が建物に戻ってきている様子もない。
このような場合においても、借主に対し、建物の明渡しを求める場合、契約解除の意思表示からする必要があるのか。
このような場合においても、借主に対し、建物の明渡しを求める場合、契約解除の意思表示からする必要があるのか。
借主が貸主に対し、当該建物の占有を移転したとの事情がないことから、貸主は借主に対する契約解除の意思表示からする必要がある。なお、貸主が契約解除をしないで建物の鍵交換等を行った場合、原則として法律上許されない自力救済に該当する可能性がある。
家賃滞納による契約解除 (本人が刑事事件で拘留の場合)
家賃滞納があり本人との連絡がとれず、保証人とも連絡が取れないため、契約を解除し、明渡しを求めようと考えている。ところが借主本人が刑事事件で拘留されていることが借主の親族からの情報で判明した。どのように対応すべきか。
既に家賃滞納があり、解除の実質要件もそなえていると考えられることから、弁護人が選任されているのであれば弁護人を通じ、あるいは接見をして、解除ないし合意解約を取り付け、あわせて中の物の処分方法についても取り決めをして対応する。まずは親族に、弁護人の有無等や、接見可能かなどを確認の上対応されたい。
家賃滞納を複数回繰り返している。契約解除は可能か
過去の裁判例では、滞納が繰り返されたケースで2ヶ月滞納でも解除を認めた例がある。したがって、過去の実績、現在の滞納期間及び催告に対するリアクション、将来に向けての資力回復の余地を総合的に考慮した上で解除することは可能であると考える。
賃料増額の合意以降の滞納
建物賃貸借契約について、貸主と借主が賃料を3万5000円から3万6000円に増額する事に合意して書面を作成したが、借主は従前の賃料金額しか支払わない。①当該賃貸借契約の解除はできるか(なお、賃料の未払いはいまだ3カ月分には満たない。)②賃料の未払い分を回収手段はあるか。
①について、賃料の一部不払いが継続している事になるが、賃貸借契約の解除は賃料の3カ月分相当の金額の未払いが解除の際の目安となることからすると、賃料の未払いがいまだ3カ月に満たない本件では、貸主は賃貸借を解除する事は難しい。②について、支払催促を申し立てるという方法はあるが、強制執行可能な財産を把握しておかないと実効性は担保されない。
強制執行の方法
未払い賃料について少額訴訟を提起して勝訴判決に基づいて強制執行した場合、当該建物の中にある借主の所有物件を破棄する事はできるのか。
建物明渡しについての勝訴判決に基づく強制執行と異なり、金銭債権についての勝訴判決に基づく強制執行においては、「当該建物の中にある借主の所有物件を破棄すること」はできない。
家賃滞納者が拘留されている場合、どのような対処をしたらよいか
借主が拘留されている警察署に面会にいき、当該賃貸借契約の合意解約及び残地物の所有権放棄についての書面を交わすべきである。
賃料債権の消滅時効は、契約が継続している場合でもありうるのか
賃料債権は、特約がない限り月ごとに発生し、月ごとの賃料債権につき、その支払時期から消滅時効が進行する。これは、契約が存続していようが消滅・終了していようが同様である。
家賃滞納の場合の延滞利息の制限はあるか。
消費者契約に該当する個人が借主の住宅賃貸借では14.6%以下。それ以外については、利息制限法等を勘案し、暴利とならない程度に設定すべき。
借主からの居住権の主張
建物賃貸借契約の借主が賃料を2ヶ月分滞納したことから「建物を退去してほしい」との話をしたところ、「私には居住権があるから退去する必要はない」との回答があった。この借主の回答に法律上の根拠はあるのか。
債務不履行による解除が認められれば、当該借主の回答に法律上の根拠はない。
滞納借主がいる状態での相続
3カ月の家賃滞納の件につき、借主に対し解除明け渡しを求めていた。その後借主から一部滞納分の支払があり、さらに貸主に相続が発生した。この場合、当初の解除は有効に存続しているか。
3カ月滞納であれば一般的に契約解除は認められると考える。その後家賃を一部支払ったとしても、まだ全額の弁済ではないこと、解除時点で既に信頼関係は破綻していたことから、解除の有効性は変わらないものと考える。(判例でも解除後に滞納分を支払ったケースについて、解除を求めた判例がある。)また、貸主側の相続の発生は、要は貸主の地位が相続人に相続され、(準)共有関係になったというだけであり、既になされた解除の効力に影響を与えることはない。
借主が逮捕された
居住用の物件で借主が逮捕起訴された。今後契約関係ををどのように扱っていけばよいか。現在は賃料の滞納等はない。また家賃保証会社をつかっている。
借主と面談し、解約の意思があるか確認する。解約の意思がない場合、契約終了を考えるのであれば解除をすることになるが、逮捕起訴されたというだけでの解除は困難である。もし実刑となれば、物件を使用する状況になく、賃料支払いも不可能になるため解除は可能であろう。一方執行猶予ないし無罪の場合には、その後の賃料支払い能力を勘案して検討すべきである。(勤務先からの解雇の可能性を視野に)また、家賃保証会社を使っての明け渡し等の対応については、違法行為がないよう、当該会社がとるべき手段を確認しておくことも大切である。
支払催促とは
債権者の申し立てにより、審尋、弁論や証拠調べなどの実質的な審理を経ず、形式的な手続きを踏むだけで、裁判書記官から債務者に対する支払の催促がなされる手続きである。(民事訴訟法382条)支払催促の送達から2週間以内に債務者から異議申立てがあると通常訴訟が開始するが、異議申立てなく2週間が経過し、仮執行宣言を付する手続きがなされると、強制執行の申し立てが可能になる。(民事執行法391条1項)金銭支払いなどについて簡易迅速に債務名義が得られる手続きである。支払催促は、債務者の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して行う。(民事訴訟法383条1項)支払催促を利用できるのは、債務者に対する送達が日本国内で、かつ公示送達によらず実施できる場合に限られる。(民事訴訟法382条但書)債務者の所在不明などの場合には、支払催促手続を利用する事はできない。金銭の支払いなどを請求する手続きなので、賃貸不動産管理においては、賃料などの金銭の不払いについて利用する事が可能である。
滞納者に差押え財産有
事業用賃貸で滞納賃料が6ヶ月に及び、催促しても支払いがない。借主には売掛金400万円がある。法的対処を考えているが、どの手続きでやればよいか。
売掛金に対し執行可能であるので、債務名義を取得して強制執行という段取りになる。債務名義取得の方法としては通常訴訟、少額訴訟、支払催促等があるが、弁護士費用等のコストを勘案して、まずは支払催促によることが考えられる。また、売掛金を保全するための仮差押えも検討に値する。
滞納家賃による法的手続きで和解の場合、決められた債務に保証人をつけることはできるか。
裁判所の和解においても、滞納賃料の分割払いにつき、保証人その他の担保処置をとることを内容に盛り込むことは可能である。裁判所に対し、分割なら保証人を立てるよう和解条件に盛り込む事を主張する事になる。
契約継続の上で債務を回収したいが…
ビルのワンフロアーの借主(無認可保育園)が、約2年間も賃料を支払っていないとのこと。(賃料月額25万円、累積600万円)他に借主を探すのに難しい地域であることから、できるたけ退去させたくはなく、未払い賃料の回収を優先させたい。どのようにしたらよいか。
借主が任意で未払い賃料を支払わない場合、未払い賃料の支払いを求める訴訟を提起して勝訴判決を得た後、強制執行をする。ただし、強制執行の対象がない場合には強制執行をすることができず、未払い賃料の回収を図ることは著しく困難であるといわざるを得ない。約2年間も賃料を支払わないのは悪質である。このような借主が、今後、賃料を支払うようになるとはおもえない。借主を退去させて、他のテナントを見つける努力をすべきであると思われる。
請求しないと支払わない関係が継続中…契約解除ないし更新拒絶は可能か
順序を踏んで
請求しなければ支払わないという行為は、契約違反行為であり、信頼関係破綻も満たし得るので解除も可能である。更新拒否の正当事由の中でも読み事ができるが、正当事由が争点になると、これだけで100%満たされるのか、立ち退き料は必要ないかなどの議論に巻き込まれる可能性があるので、上記事情を指摘の上、合意解約の方向で話をすすめてはどうか。それでもだめな時は、解除、更新拒絶で対応するとういう順序で検討するのが得策ではないか。
悪質な居座り行為
建物賃貸借の賃料を4ヵ月間も支払わない借主がいる。どのような対応をすべきか。
まず賃貸借契約を解除する内容の通知書を配達証明付きの内容証明郵便で送付する。その後、借主と建物明渡しの交渉をして、借主が任意で建物を明渡さない場合には、建物の明け渡しを(未払い賃料の支払いも)を求める訴訟を提起することとなる。(なお状況に応じては占有移転禁止の仮処分を申し立てる必要がある。)
占有移転禁止の仮処分
債務者に対し不動産の明け渡しを求める訴訟を提起する場合に、債務者が訴訟係属中に第三者に住まわせるなど占有を移してしまい、明渡しの強制執行ができなくなるおそれがあるとき、占有の移転を禁止するための仮処分。この仮処分命令に基づき、執行官がその不動産を保管中に違反して占有が第三者に移転されても、債権者が後日、債務者に対する本案訴訟で勝訴した場合は、第三者に対して改めて訴訟を提起しなくても、原則として第三者に対して明渡しの強制執行をすることができる。
占有移転禁止の仮処分
債務者に対し不動産の明け渡しを求める訴訟を提起する場合に、債務者が訴訟係属中に第三者に住まわせるなど占有を移してしまい、明渡しの強制執行ができなくなるおそれがあるとき、占有の移転を禁止するための仮処分。この仮処分命令に基づき、執行官がその不動産を保管中に違反して占有が第三者に移転されても、債権者が後日、債務者に対する本案訴訟で勝訴した場合は、第三者に対して改めて訴訟を提起しなくても、原則として第三者に対して明渡しの強制執行をすることができる。
解除条件(滞納一ヶ月)
建物賃貸借契約において、賃料1ヶ月のみの滞納では契約を解除する事はできないか。
賃料1ヶ月のみの滞納では、通常は信頼関係崩壊の事業があるとはいえず、特段の事情がない限り、契約を解除する事はできない。
裁判による判決が出た後の回収方法
滞納家賃につき、借主及び連帯保証人に対し判決が取れた。今後どのように回収を図るべきか。
借主及び連帯保証人の責任財産の有無を確認する。不動産を保有していれば、強制執行手続きとして差押えをかける。これだけでも任意の支払いを促す効果があるが、任意での履行がない場合、実際に競売申し立てをする。動産も同様である。給与債権等が判明すれば、その債権の差押え、転付命令の取得などで回収を図る。いずれにしても財産調査の上、費用対効果をを勘案し対応を検討することになろう。
借主が個人契約から法人に切り替えた場合の未払い賃料の請求先
アパートの一室を、当初、個人に貸していたが、途中からA法人との契約に切り替えた(居住者は当初の借主と同一)。しかしA法人が会社更生手続きの開始を申し立てて経済的に破綻したため、未払い賃料が生じてしまった。(なお、未払い賃料はA法人が会社再生手続き開始申し立て前のもの)
①当初の賃貸借契約の連帯保証人には当初の借主の父親になっていたが、未払い賃料を当該父親に請求する事は許されるか。
②仮に許されない場合は、未払い賃料は誰に請求べきか。
①当初の賃貸借契約の連帯保証人には当初の借主の父親になっていたが、未払い賃料を当該父親に請求する事は許されるか。
②仮に許されない場合は、未払い賃料は誰に請求べきか。
当初の契約者と切り替え後の契約者は別人格であることから、当初の契約と切り替え後の契約に同一性がない。したがって、当初の契約の連帯保証人は、特に切り替え後の契約についても連帯保証する旨の明確な意思表示をしていない限り、切り替え後の賃貸借契約についての連帯保証責任を負わない。したがって①については、未払い賃料を当該父親に請求する事は許されない。②については更生債権としてA法人の再生管財人に届ける。
直接交渉を避けたい場合
アパートの1室の賃貸借契約について、賃料を支払ったり支払わなかったりの借主がいる。しかし、当該借主は一見して精神疾患等を患っている様子がうかがわれることから直接交渉は避けたい。どのような手段をとったらよいか。
借主は精神疾患を患っている様子であることからすると、何が起きるか分からない。したがって、裁判手続き外での話し合いでの解決は難しいと思われる。調停を申し立てるという方法もあるが、本件は賃料の未払いがあり、借主が今後きちんと賃料を支払い可能性が高いとはいえないことからすると、やはり、建物の明け渡しを求めざるを得ない。とすれば、訴訟を提起する方向で検討すべきであると思われる。
未払い賃料をもっていきなり訴訟できるか。
ある建物の借主が3カ月の賃料を支払わなかったことから話し合い、借主は同建物から退去し、未払い賃料については「半年後に支払う」との内容を誓約書を作成して貸主に渡した。それから半年が経過したが、借主は未払い賃料を支払わない。いきなり訴訟はできるか。
理屈城上は、ただちに訴訟を提起する事はできる。ただし、通常は未払い賃料の支払いをもとめる通知書を内容証明で送付して、反応がない場合に訴訟を提起するという手順を踏む。なお、この手順を踏まずにいきなり訴訟を提起した場合、裁判官の心証にマイナスの影響を及ぼすことが考えられる。
賃料滞納者が暴力団関係者である場合
暴力団の準構成員が借りている物件で、賃料滞納が5カ月に及んでいる。法的手段も考えているが、他に警察の協力を得て対応できないか。
暴力団印であるという威力のもとに具体的な行動をしていれば警察も対応する。また賃料不払についても、その威力を用いて債務免除を求めてきとというのであれば、暴対法適用のきっかけにもなるので、その借主の行動を記録して、警察に相談する事も可能である。ただし、警察が必ず動くともいえないので、この件では、賃料滞納が5ヶ月に及びかつ、入居時に暴力団員ではないと偽って契約しているとして解除は認められるので、法的手段で進めていく事を基本とし、並行して警察に相談するといった対応が考えられる。
重なる滞納による解除通告は可能か
事業用契約で賃料につき、入居当初から催促しなければ払わない状態が継続している。この場合において、次回期日まで支払がなければ解除する旨の通知をすることは可能か。
契約違反行為である。
催促しないと支払わないのは、借主としての義務を果たした事にはならず、契約違反行為であり、かつそれが入居当初から継続せしている以上、信頼関係も破綻しているということが可能であろう。したがって、解除予告つきで、催促する事は問題ないと考える。ただし実際の解除の場面では、信頼関係破壊の要件が充足するかについて争われる余地はあるので、催促経緯や対応につき記録しておくことが望ましい。
合意解約
家賃滞納3カ月のケースで、2ヶ月分が敷金で充当し、1ヶ月分は放棄するから解除するという解決方法はあり得るか。
合意解約として扱い、上記内容を解約の条件として取りきめることは可能である。
家賃等の延滞利息の上限は14.6%か
消費者契約法の適用がある居住用で個人が借主の契約については14.6%、それ以外については消費者契約法や利息制限法などを参考にしつつ、当事者間での合意に基づく。
未払賃料の遅延損害金の利率
賃貸借契約に、未払賃料の遅延損害金の利率についての約定がない場合の利率は。
未払い賃料の遅延損害金の利率に付いての約定がない場合、法定利率が遅延損害金の利率となる。そして、法定利率は年5%である。なお、賃貸人が不動産を賃貸する行為は商行為である。として障子法定利率である年6%が法定利率であると考えも成り立つ。
訴状等の送達方法
滞納家賃の催促の法的手続きを検討しているが、借主は居留守を使い、書留での書面棟は一切受け取らない。この場合、法的手続きを取るにしても、どのようにして訴状等の送達を行う事ができるのか。
補充送達と差置送達
補充送達、差置送達をした上で送達不能の場合には、書留郵便等により送達する。この場合は発送の時に送達があったものとみなされるため、受取り拒否でも送達が可能である。また、公示送達も可能である。(ただし支払催促の場合公示送達の方法は採れないため、この場合には訴訟を検討する。
補充送達(民事訴訟法106条1項)
名宛人でなくとも、同居人または使用人その他の従業者であって「相当のわきまえのある者」に交付する事。
差置送達(民事訴訟法106条3項)
名宛人の住所、居所において、名宛人等が正当な理由なく受領を拒否するときに通常送達すべき場所に書類を差し置く事。
補充送達(民事訴訟法106条1項)
名宛人でなくとも、同居人または使用人その他の従業者であって「相当のわきまえのある者」に交付する事。
差置送達(民事訴訟法106条3項)
名宛人の住所、居所において、名宛人等が正当な理由なく受領を拒否するときに通常送達すべき場所に書類を差し置く事。
催促に要する経費等を合わせて請求できるか
一定の経費の支払が債務不履行との間で因果関係が認められれば、家賃滞納という債務不履行に伴う損害賠償として、法的には請求対象となり得る。たdし、手続きに要する弁護士費用は、債務不履行による損害と認められないと解されている。
未払賃料が90万円の場合は少額訴訟制度の利用は
一部請求にして少額訴訟を2回提起すれば可能。
連帯保証人に少額訴訟制度で請求できるか
金銭支払債務であり、代替的行為なので、できる。
未払賃料の時効期間は
5年である。