FAQ 賃貸管理トラブル集

漏水調査依頼 (1世帯のみの問い合わせ)

合計24戸、築20年のマンションン賃貸管理をしている。その中の1戸の借主から「6月の水道料金が4月の水道料金と比べて20%も上昇。その原因として漏水の可能性がある。調査をしてほしい」との連絡が入った。なお「水道料金があがった」と連絡してきた借主は、この1戸のみであり、その家族構成は4人である。
漏水の調査には多額の費用がかかる。そこでまず、「水道料金が上がった」との連絡があったのが1戸のみであることを説明して、もう少し様子を見てもらう事に理解を求める。それでも「漏水の可能性がある」との場合、多額の費用をかけて漏水の調査をするまえに、マンションの住民に説明をして全戸の水道を一斉に止めて調査する(全戸の水道を一斉にとめても水道資料が認められている場合は漏水の可能性が高い)。そして、漏水の可能性が高いとの結論に達した場合には専門業者に依頼する。

老朽化した建物を賃貸している場合

築30年以上の一戸建て2戸の賃貸借契約の管理をしている。貸主は本件建物を7~8年前からレストランを営む会社に賃貸している。借主である会社は多額の日費用をかけて本件建物を改修し、古い民家のレトロな雰囲気での食事を売り物にして業績も好調のようである。しかし、本件建物は老朽化しており、素人が見ても耐震補強をしないと危険な建物である。どのように対処すべきか。
建物の所有者は工作責任を負うことから、本件建物の老朽化が原因で事故が起こった場合、本件建物の所有者件貸主は損害賠償責任を負う可能性がある。事故が発生した場合、本件建物の管理者であるものも善管注意義務に基づく損害賠償責任を負う場合があるといわざるを得ない。そこで、まず、早急に、本件建物の耐震診断をすべきである。そして、本件建物の改修ないし、建て替えが必要であるとの結果が出た場合は、本件建物の改修ないしは建て替えをしなければならない。しかし、借主にしてみれば、業績好調のレストランを改修の場合は一時的に閉店、建て替えの場合は閉店しなければならなくなることから、借主が本件建物の改修ないし建て替えを拒否することも予想される。この場合は、事故が起こった事に基づて発生した損害賠償責任の多くを借主の責に帰せしめることになる。とにかく、本件建物の所有者件貸主及び管理者としては、早急に、本件建物の耐震診断をして、その結果に基づき、補修ないし建て替えの判断をして、その判断結果を借主に示すことである。

土地の賃貸借契約における負担区分(壁と雑草)

土地所有者兼貸主は賃借人との間で土地、倉庫及び工場についての賃貸借契約を締結している。①倉庫ないし工場の外壁に問題が生じた場合の修繕費用は貸主・借主のどちらが負担すべきか。また②雑草の除去費用は貸主と借主のどちらが負担すべきか。
貸主は借主に対して、本物件を使用及び収益させる義務を負いかつ修繕義務を負う。したがって、①倉庫ないし工場の外壁に問題が生じた場合の修繕費用は賃貸人が負担しなければならない。(ただし、倉庫ないし工場の外壁に生じた問題が、借主の故意ないし過失に基づく場合は借主が負担する。)②雑草の生い茂る程度にもよるが、原則として雑草の除去費用も貸主が負担することになる。

水漏れ事故による借主からの休業補償的な請求を受けた場合

水漏れ事故が発生し、店舗借主の什器等に損害が生じた。物損については保険でカバーされたが、借主からの休業補償的な請求がなされている。それに対し、貸主は一定期間家賃を減額する意向であるが、このような解決は可能か。
観念的には、休業補償も損害の一部として請求可能可能であるが、実際の損害額の算定や、因果関係の立証に困難を生じる場合もまれでない。その点を踏まえつつ、借主に対し上記提案に基づき話し合いで解決をはかること自体は有益であり、借主さえ了解すれば、裁判外での私法上の和解という位置づけで可能である。この場合、書面で明確に合意内容を取り交わすことが大切である。

ガスエアコンのリモコンを紛失。取り換え費用全額請求できるか。

ガスエアコンが設置されている物件で、借主が退去にあたってリモコンを失くした。当該エアコンはリモコンがないと作動できないため、取り換えが必要。(製造後10年以上たっているためリモコン・エアコン共に製造中止)貸主は全額借主に取り換え費用を負担するように要求している。どのように考えるべきか。
理屈上は、リモコンを紛失しエアコンが使えず、取り換えなければならないということを損害ととらえ、損害賠償請求として全額負担を求める事は可能である。ただし、相当因果関係が問題とされ、全額が認められるのは難しいだろう。

老朽化による借主からの要請への対応

事業用賃貸借として衣装の倉庫として貸していた物件(築年数はかなり古いもの、家賃は相場よりも低い)につき、床の強度不足等から荷台等の搬入が困難になりつつある。この点につき、将来的に借主から貸主に対して、貸主の修繕義務としての補強工事の要請がくることが予想されるが、どのように考えればよいか。

判例で補強工事を認めなかった事例有。

事業用物件であり、借主も借りるときに現状を確認して借りているということ、家賃が地域相場よりも低いことから、貸主が負っている目的に従って使用させる義務も、上記事情を加味すれば緩和すると考えることも可能であろう。したがって双方の協議の中で決定される内容であるととらえるべきでないか。

性能の欠如がある場合の責任追及

バルコニーに排水口が設置されておらず、雨の度に水浸しになってしまう。設計施工会社に責任追及できないか。
当該不備が設計施工上の瑕疵であり、居住者の生命財産に影響が生じるものであれば、設計施工会社に対し法的責任を求めることが可能である。ただし、債務不履行責任の時効期間は10年なので、それを超えている場合は不法行為責任を検討することになる。

消耗品の損傷で水漏れ

賃貸管理物件で水漏れがあり、原因は水道部分の消耗品に損傷があり、修繕を行った。契約には消耗品の修繕は借主の負担と定めている。この場合、誰にどの程度費用を請求できるか。

契約上は借主だが...

金額は、実際に工事に要した費用となる。契約上は借主に負担を求めることとなるが、その損耗が入居当時から存在したのかなどの問題もあり、物件を目的に従い使用収益させる義務及び原則として修繕義務が貸主にあるととなどを踏まえ、契約の有効性などに留意しつつ負担者を検討すべきである。

合意解除後に借主からの請求

築年数の経った一戸建ての建物を借りたところ、特に2階の結露がひどく、床に水がたまるくらい濡れてしまうような状態で、実際に衣服も濡れてしまい使用できなくなったものもある。そのため借主は、貸主との賃貸借契約を合意解除して建物を退去することにしたが、その際、借主は、貸主に礼金相当額の返還を求めることは可能か。
貸主は借主に対し、本件建物を使用収益させる善管注意義務を負っているところ、本建物は古いことなので、貸主は結露がひどいことは十分に認識していたと考えられる。にもかかわらず、本件建物の2階の結露の状態が悪いことを説明せず、結果、借主に損害を与えたものと思われる。したがって原則として、借主は貸主に損害賠償を求めることができると考えられる。とはいえ、借主の損害額は高額でないと思われることからすると、裁判まですることは、労力・時間・コストを考えると割に合わない可能性が高い。したがって、借主が貸主に「礼金相当額の返還で和解して、この紛争を解決する」旨協議することは特に問題ない。しかし、貸主がこの申し入れに同意しない場合は別の和解案を検討するか、もしくは、小額訴訟等の法的手続きをとる必要が出てくる。