FAQ 賃貸管理トラブル集

老朽化による借主からの要請への対応

事業用賃貸借として衣装の倉庫として貸していた物件(築年数はかなり古いもの、家賃は相場よりも低い)につき、床の強度不足等から荷台等の搬入が困難になりつつある。この点につき、将来的に借主から貸主に対して、貸主の修繕義務としての補強工事の要請がくることが予想されるが、どのように考えればよいか。

判例で補強工事を認めなかった事例有。

事業用物件であり、借主も借りるときに現状を確認して借りているということ、家賃が地域相場よりも低いことから、貸主が負っている目的に従って使用させる義務も、上記事情を加味すれば緩和すると考えることも可能であろう。したがって双方の協議の中で決定される内容であるととらえるべきでないか。

性能の欠如がある場合の責任追及

バルコニーに排水口が設置されておらず、雨の度に水浸しになってしまう。設計施工会社に責任追及できないか。
当該不備が設計施工上の瑕疵であり、居住者の生命財産に影響が生じるものであれば、設計施工会社に対し法的責任を求めることが可能である。ただし、債務不履行責任の時効期間は10年なので、それを超えている場合は不法行為責任を検討することになる。

消耗品の損傷で水漏れ

賃貸管理物件で水漏れがあり、原因は水道部分の消耗品に損傷があり、修繕を行った。契約には消耗品の修繕は借主の負担と定めている。この場合、誰にどの程度費用を請求できるか。

契約上は借主だが...

金額は、実際に工事に要した費用となる。契約上は借主に負担を求めることとなるが、その損耗が入居当時から存在したのかなどの問題もあり、物件を目的に従い使用収益させる義務及び原則として修繕義務が貸主にあるととなどを踏まえ、契約の有効性などに留意しつつ負担者を検討すべきである。

合意解除後に借主からの請求

築年数の経った一戸建ての建物を借りたところ、特に2階の結露がひどく、床に水がたまるくらい濡れてしまうような状態で、実際に衣服も濡れてしまい使用できなくなったものもある。そのため借主は、貸主との賃貸借契約を合意解除して建物を退去することにしたが、その際、借主は、貸主に礼金相当額の返還を求めることは可能か。
貸主は借主に対し、本件建物を使用収益させる善管注意義務を負っているところ、本建物は古いことなので、貸主は結露がひどいことは十分に認識していたと考えられる。にもかかわらず、本件建物の2階の結露の状態が悪いことを説明せず、結果、借主に損害を与えたものと思われる。したがって原則として、借主は貸主に損害賠償を求めることができると考えられる。とはいえ、借主の損害額は高額でないと思われることからすると、裁判まですることは、労力・時間・コストを考えると割に合わない可能性が高い。したがって、借主が貸主に「礼金相当額の返還で和解して、この紛争を解決する」旨協議することは特に問題ない。しかし、貸主がこの申し入れに同意しない場合は別の和解案を検討するか、もしくは、小額訴訟等の法的手続きをとる必要が出てくる。

エアコンに関しての特約

事業用物件で、前の借主が10年使用した業務用エアコン付きで貸すことを予定している。契約、中途故障した場合の修理費用は借主が100%、取換え費用は貸主と借主が折半で負担するとともに、買取請求をしないとの特約をしようと検討中。この特約は問題ないか。
いずれの内容も、当事者間での合意があれば有効である。その際には、エアコンが10年使用したものであることなどを知らしめた上で、上記内容につき十分説明の上、契約することが大切です。

貸主の修繕義務を放棄できるか

貸主が所有する古い建物を賃貸するにあたり、貸主が修繕義務を負うのは嫌だと言い出した。修繕義務を借主の負担とする特約は有効か。

正当化要素と借主の納得が必要

修繕義務は貸主の義務であるが、契約の自由の原則から、特約で借主の負担とすることはできる。ただし、単に契約書に「修繕義務は借主の負担とする」との内容を条項に設けるのみでは足りず、借主が真に納得して特約につき合意したこと、及び、修繕義務を借主の負担とすることの正当化要素が必要である。そこで、貸主と借主との間の賃貸借契約書に①現在は当該建物に修繕を要する部分はないが、当該建物が古い物件であることから、今後は修繕が必要な部分が出てくることが想定されること、②(①を借主が十分認識した上で)修繕義務を借主の負担とすること、③(修繕義務を借主の負担することに対応して)賃料の家賃を相当額引き下げるなどの内容の特約条項をいれておくことが重要である。

構造上の問題の説明がなかった場合(エアコンスリーブ等)

賃貸マンションで、借主がリビングとして使用している部屋にエアコンを取り付けようとしたところ、構造上の問題で取り付けることができなかった。業者に対しても「説明がなかった」としてクレームがきている。どのように対応すればよいか。

最終的には建築会社にも

リビングルームにいかなるエアコンも設置できないというのは、貸主側の居住目的に従い物件を使用させるべき義務に反すると評価される余地がある。また構造上の問題とはいえ、一般的な注意義務をもってそのような不具合がわかる場合には、業者の調査説明に係る過失責任も問われる余地がある。代替物件の提供等で対応を図るとともに、そもそも原因が設計施工上のミスにある可能性が高いので、最終的には建築会社にも応分の責任を求めることが考えられる。

地震による破損による補修負担

地震により、備え付けのレンジが落下したり、人が転んだりしたことによって壁に穴があいてしまった。補修は貸主又は借主のどちらの負担になるのか。
破損の原因が地震であり、かつ、レンジの落下等が借主の注意義務違反と評価しにくいため、原則として、賃貸借契約上の貸主の修繕義務の範疇に入ると考えられる。

貸主による保存行為

排水設備につき、汲み取りから下水道に変更する工事につき、借主の一人と連絡が取れない。ただし、借主は物件をしようしている。借主の承諾無くして立ち入り、工事をすることができるのか。
当該工事は保存行為に該当し、借主は当該工事の実施につき拒否できず、かつ、それに付随する立ち入りも、正当な理由なく拒否できない。したがって、再度、工事の時期、借主に応諾義務があること、時期的に変更が必要であればすぐに連絡すること、連絡がなければ保存行為の一環として立ち入り、工事を実施することを書面で通知しておく。