FAQ 賃貸管理トラブル集

相続による所有者変更における契約書のまきなおし

平成15年9月から、契約期間2年の賃貸借契約をしていた。今般所有者が相続によって代わったので、新貸主から改めて契約書を作成してほしいと言われている。この場合に契約書を新たに作成する必要はあるか。また、契約期間はどのように設定すべきか。
相続による一般承継の場合、貸主の地位も従前の契約内容のまま引き継がれる。したがって、契約書を改めて作成しても、合意書を作成し、従前と同様のところは「添付の契約書の条項に従う」と定める方式でも、どちらでもかまわない。また、契約期間は、基本的に従前の期間を承継し、終期は平成21年8月末ということになるが、合意で新たに、合意時から2年間としてもかまわない。(借主に有利な変更であるので問題ない。)

賃貸物件の相続後の契約書まきなおし時に賃料の増額は可能か

兄所有の建物に妹が賃料相場よりも安い価格で賃借している。今回兄が死亡し、姉が相続したところ、姉妹間で改めて契約書を作成することになった。どのような内容にすべきか。新所有者である姉は賃料の増額もしたいと考えている。
相続による一般承継の場合、貸主の地位もそのまま移転し、契約内容も従前と同様になる。ただし、合意により条件を変更することは可能であるので、賃料増額を含めて協議することが先決。もし合意ができなければ従前の契約内容を書面化することになる。居住者である妹には、賃料が相場よりも相当安いことをある程度データーで示すことが必要である。

サブリース契約でオーナーが破産

サブリース契約で、オーナーが破産した場合、エンドユーザーからサブリース業者が預かり保有していた敷金はどうなるのか。エンドユーザーとの賃貸借契約では、オーナーが破産等をした場合、エンドユーザーが敷き金額に充当されるまでの賃料の支払いは拒否できる旨している。
オーナーが破産した場合、あくまでも破産財団を構成するのは原賃貸借契約上の債権である。サブリース契約に基づきサブリース業者が保有している敷金や賃料債権等は、原賃貸借契約上特段の定めがなければオーナーに何ら権利義務が発生するものではないことから、原則としてそのまま保有できる。ただし、その意味では、このエンドユーザーとの間の賃貸借契約条項は、いかなる意味をもつのか疑問である。

火事が発生した場合、火元の借主に請求は可能か(重過失ではない)

アパートで火事が発生した。保険である程度カバーできるが、不足分につき火元の借主に請求する事はできるか。失火責任法では重過失がない限り損害賠償請求はできないとされているが、本件でも現場検証の結果借主に重過失までは認めがたいということである。
不法行為責任の観点からは、失火責任法が特別法として存在し、失火者に重過失がないと損害賠償請求はできない。しかし、賃貸借関係では、借主は貸主に対して債務不履行責任も発生しうるが、こちらには失火責任法は適用されない。したがって、当該失火が借主の善管注意義務違反であることが明らかであれば、それと相当因果関係を有する損害については損害賠償をすることができる。

建物の出火から隣家が延焼。隣家は火元の借主に損害賠償は可能か

アパートの貸室から出火があり、隣家が延焼した。この場合、失火責任法が適用されて隣家は火元借主に損害賠償請求は出来ないのか。また、貸主はアパートの損害につき損害賠償請求はできないのか。
隣家との関係では失火責任法が適用され、借主に重過失がなければ法的責任は発生しない。一方、対貸主との関係では、借主としての善管注意義務違反が問題となり、この場合には借主は軽過失であっても損害賠償義務を負う事になる。

漏水事故でテナントが1日休業した。休業補償は必要か。

漏水事故の原因がどこにあるのか。(貸主や管理会社の管理不備か、借主の使用上の問題か等)により異なる。債務不履行等と因果関係にあれば休業補償も認められるが、まずは原因を分析すると徒に、仮に休業補償をする場合にはその金額につき、借主に対し十分な根拠資料の提供を求めることが必要であろう。

漏水事故による損害の基準は

建物の2階の配管部分から水漏れがして(なお、建物の設置・保存の瑕疵に基づくものであることについては争いがない)、当該建物部分の1階にある飲食店に浸水し、当該飲食店は、修理が完了するまでの一定期間、店にあるテーブルのうち1割程度の使用・収益をすることが出来ない状態になってしまった。現在、当該飲食店と損害賠償についての話し合いをしているところである。飲食店が被った損害についてはいかなる基準で算出したらよいか。
相談内容のような場合の損害算定については、定型的な算出方法があるわけではない。なお、1つの方向性としては当該飲食店の月間利益×1割という考えもあると思われる。

アパートで漏水事故にあった借主より家賃の引き下げがあった

2階建てのアパートの2階部分から、同年と翌年に水漏れ事故が起こった。(なお、事故原因はいまだに解明されていないが、建物の構造に事故原因があることについては争いがない)幸いにして当該2階の部屋の下にある1階の部屋に物品の破損等は無かったが、当該水漏れ事故の対応に追われた借主から家賃の引き下げの申し入れがあった。どのように対応すればよいか。
貸主には修繕義務はあるが、家賃の引き下げの義務は無い。貸主の対応としては、①修繕義務にのみ応じる②(修繕義務に応じた上で)解決金として一時金を支払う③(修繕義務に応じた上で)借主からの賃料引き下げの要求に応じるとの対応が考えられる。

雨漏りによる損害賠償は

所有する2階建ての賃貸アパートの屋根に欠陥があって雨漏りしてしまい、2階の部屋に住んでいた借主所有の絨毯が損傷してしまった(なお、保険は下りなかった)当該建物の所有者兼貸主は借主に対し、当該絨毯の損傷についての損害を賠償する必要があるのか。
貸主は工作物責任(民法717条)を負う立場にあることから、貸主は借主に対し、当該絨毯の損傷についての損害を賠償する必要があるといえる。ただし、賠償する損害額は、当該絨毯の新品価格ではなく、事故があった時点での価格が基本となる。