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コラム
土地転貸で所得税法36条と同法157条かを争った事例
今回のテーマはいったいなんなんだと思われる方が多いと思います。
これは、平成23年7月~9月まで争った不動産貸付業を営む請求人が、国税不服審判所に対して主張していた事例です。内容は、請求人が、同族会社に対して土地を賃貸し、同族会社が第三者に土地を転貸。その金額が、請求人が同族会社に賃貸した賃料と大きく差があり、所得税の負担を不当に減少させたということで、税務署が更正処分をしたというものです。
まず、所得税法36条1項と同法157条1項とはどういうものかを説明致します。
所得税法36条1項
その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とするべき金額または総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とすることを規定。
所得税法157条1項
税務署長は同族会社の行為又は計算で、これを容認すると、その株主等である居住者の所得税の負担を不当に減少させる結果になると認められるときは、所得税に係る更生又は決定に際し、その行為または計算にかかわらず、各年度分の総所得金額または所得税の額等を計算する事ができると定めている。
これをふまえて上記の事例にそれぞれの主張をみて、再審所の判断をまとめます。
請求人は、157条は、税額確定の例外規定であるから36条と157条の両方の適用が考えられるときには、原則規定の36条を優先して適用すべきであると主張
処分庁は、157条は36条と別に規定されていること、157条は法律や契約上、収入すべき権利、事実又は担税力の基礎となるべき資産の増加の事実を課税要件とするものではないことからすれば、36条が適用できる場合でも157条の課税要件を満たす限り、税務署長は更生等をできると主張
再審所の判断は、
157条は、収入金額または総収入金額に関する通則的な規定である36条とは別に、特別規定を設けた所得税法の構造からすれば、仮に、第三者から同族会社への支払いが実質的には株主等に帰属する所得であるとして36条で総所得金額を増額する事が出来る場合でも、その立証の困難性から、157条の要件を満たす限り、税務署長は157条を適用して所得税の更生又は決定を行う事ができる。その要件を充足する場合にまで、36条の適用を優先させ、157条の適用が否定されると解されるのは相当ではない。と判断した。