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コラム
鍵に関するトラブルで賃貸人と管理会社の責任
前の入居者が退去した後に室内のリフォームをして雰囲気をかえたり、
室内の設備等のクォリティーを上げたりしますよね。
その際に、鍵の交換まで考えているオーナー様はどれくらいいるのでしょうか。
実は、この交換が後に大きな損害賠償を被る可能性があるのです。
今回はある事例をもとにご紹介いたします。
賃貸マンションの借主様が空き巣に入られたケースですが、その犯人は、同部屋を借りていた前の入居者でした。
そこで被害者は犯人に弁償能力がないので、貸主に弁償をしてほしいといってきました。
上記のような事件ですが、結論は、貸主にも責任が生ずる可能性が高いものと考えられます。
そして、その追求先は管理会社にも及ぶ可能性もあります。
ここで、論点となるのが、
賃貸人の義務、賃貸人の鍵の交換義務、鍵の交換に関する免責事項、管理会社の注意義務です。
賃貸人の義務となると賃借人が契約に定められた目的に適した状態で建物を利用できるように配慮すべき義務があります。したがって、賃貸借契約においては、賃貸人と賃借人しか立入ることのできない物件を賃貸する事が、賃貸人の債務の内容として合意されているものと考えます。よって、この場合は鍵を前入居者から回収しなかったことより、第三者が容易に侵入できる物件を賃貸したという点で追及されます。
賃貸人の鍵の交換義務ですが、上記のような義務があり、民法601条より「入居者が平穏に生活できるような住宅を提供する義務がある」と解されていますし、判例では、鍵交換について「新たに賃貸借契約が締結される場合の鍵の付け替えは賃貸人が当該物件管理上の責任を負っており、その義務の履行としてとらえるのが相当」と判示しています。
このような判例からすると、賃貸人にとっては、前入居者に対して合鍵を含めて一切の鍵の返還を求めただけでは足りないこととなります。
このような見解に立てば、賃貸人は賃借人が変わる度に鍵を交換しなければならず、その費用も賃貸人が負担するのが原則となります。
つぎに特約等での免責事項ですが、原則として消費者契約法によって賃借人にとっても不利益なものは無効ですが、一方的に不利益でない客観的事情としては、つぎのようなものが考えられます。
①賃貸人から十分に説明を受けた上で、鍵交換で本来かかる費用が賃料に反映され賃料が相場より低く設定されている場合。
②免責条項と引き換えに賃借の申し込みが競合した物件を優先的に借りうける場合。
③鍵が特殊なもので、通常合鍵の作製は困難であり、賃借人が安心して居住できることが客観的にも明らかな場合。
などは上記免除条項を定めたとしても有効ではないかと考えます。
それでは管理会社には責任がないのでしょうか。いや、賃貸人に代わって業者が管理する場合、賃借人と業者が直接契約を締結したときは、その契約内容に従って責任関係が処理されているわけですが、基本的には貸主と同様の責任が生じます。