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コラム
賃貸借物件の所有者の変更と賃借人の権利・・・・競売による変更
今回は3つ目の原因で競売による変更での賃借人の権利をご紹介致します。
①この競売に関しては入居前にすでに差し押さえられていた場合と②抵当権の設定前にすでに入居していた場合
、③そして入所時点で抵当権の設定がされていた建物を賃借し、入居後に競売にかけられたケースの3つがあります。
①の場合は、競落で所有者が変わった場合は、賃貸借は差押えの処分禁止効に抵触します。よって新所有者に
賃借権を主張できず、求められれば即時に退去しなければなりません。
②は競落した新所有者に対しても賃借権を主張できます。
問題は③です。
今回の競売による変更は、抵当権が設定されている不動産を賃借し、その後競売になった場合をご説明致します。
平成16年に法改正により短期賃貸借制度は廃止されました。しかし経過処置により平成16年4月1日の時点で
短期賃貸借制度を結んでいた場合は引き続き保護を受ける事ができます。
【短期賃貸借制度とは建物の場合は3年、土地の場合は5年以内の賃貸借契約】
改正法施行時点で短期賃貸借であった場合は以下のように分類されます。
(1)改正法施行前に短期賃貸借契約を結び、改正法施行後に競売が開始された場合。
短期賃貸借として保護されます。 敷金は新所有者に請求できます。
(2)賃貸借契約が更新された場合
※改正法施行前に短期賃貸借契約を結び、改正法施行後に短期賃貸借として更新されその後競売
※3年を超える賃貸借であったが、改正法施行前に短期賃貸借として更新され、その後に競売
どちらについても改正法施行時に短期賃貸借となっているので保護されます。
(3)期間の定めのない建物賃貸借
※期間の定めのない建物賃貸借も、短期賃貸借も該当します。
※ただし、期間の定めのない契約は6ヶ月の解約申し入れで期間を終了させることができ、競売の取得が正当事由
とされますので6ヶ月程度で解約に応じなければならない場合もあります。
(4)競売開始後に賃貸借期間が満了した場合
※この場合、差押えによる処分制限効との関係で、合意更新できないことと、抵当権実行による差押えの効力
が生じた後に期間が満了した場合には、法定更新の適用はなく、新所有者に対抗できない。
よって退去の要求に応じなければならなく、敷金も旧所有者にしか請求できなくなります。
次に改正施行前に長期賃貸借を結んだ場合は短期賃貸借保護の制度の適用はなく、退去を求められれば直ちに
明渡し、旧所有者に敷金の返還請求する事になります。
そして一番多いのが、改正法施行後に賃貸借契約を結んだ場合ですが、
原則は、短期賃貸借制度は適用されません。代わりに6ヶ月の明渡し猶予期間が設けられました。
そして、敷金についても旧所有者に請求する事になります。
これには例外があります。改正法施行後に建物賃貸借についての登記が行われ、かつこの登記の前に設定された
すべての抵当権者の同意を得た旨の登記がなされた場合は、その後に競売になったときでも当然に賃貸借を継承し
新賃貸人になります。しかしこの方法はなかなか了解してもらえないでしょうね。
それでは賃借人はどのような点に気をつけたらよいかですが、
※入居と差押え・抵当権設定の前後関係の調査
※短期賃貸借を廃止する法律の施行と賃貸借契約の前後の確認
※契約書の書き換えの危険性
※買受人に対抗できない場合