Column
コラム
相続時に中古資産の耐用年数の適用は
不動産貸付業を夫婦で営んでいたが、配偶者が建てた賃貸マンションなどの複数の減価償却資産を
相続により取得した際に、法定耐用年数による減価償却ではなく、
中古資産に係る簡便法による耐用年数を適用した。
この申告に対して原処分庁から所得税の更生処分を行ったが…
争点は以下の通りです。
原処分庁
所得税法60条1項は、個人が相続により取得した資産を譲渡した場合の所得金額の計算について、
相続人が当該資産を「引き続き所有していたものとみなす」旨規定している。
一方、中古資産の耐用年数等を定めた耐用年数省令3条1項は、個人が使用された減価償却資産の
取得をした場合に適用されるが、相続で取得した請求人は取得日以前から本件各減価償却資産を
引き続き所有していたとみなされ、使用された減価償却資産の取得とは認められない。
申告者
所得税法60条などは相続による取得が含まれることを前提としているが、耐用年数省令3条に規定する取得には
相続を除く旨の明文規定はなく、文言解釈の統一性の要請から同条に規定する取得は相続による取得を含むと
解すべき
審判所の判断
所得税法60条の規定を受けた所得税法施行令126条2項は、減価償却資産について相続等による取得の場合、
譲渡所得課税に係る繰り延べを行うと規定している。同規定は単に当該減価償資産の取得価格を引き継いで償却費
の額の計算を行うにとどまらず、前所有者から取得の時期、当該取得時から相続等による取得までの経過年数、
未償却残高も併せて引き継ぐことを当然の前提として規定していると解される。
このため、相続により取得した建物等の減価償却資産に係る償却費の額の計算では、前所有者の用いた
法定耐用年数によるべきであると裁決した。