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コラム
マンションの上下階の音に関するトラブル判例・・・ 階下の請求が認められた事例
前回のtopicでの判例が好評でしたので、今回と次回は音に関するトラブル判例をご紹介します。
なぜ、2回に分けるかと言いますと、一般的には階下の言い分が通りやすいイメージがありますよね。
しかし、必ずしも階下の言い分が通るとは限らないこともあるのです。
それは、次回として、今回は階下の精神的苦痛による損害賠償請求が認められた事案です。
事案の概要
階下の住人をXとし、階上の住人をYとします。
Xはマンションの1室を購入して夫婦で居住していた。
その後、YがXの住戸の上階の住戸を賃借して居住した。
Yの居住開始後、当時3歳から4歳が室内を走ったり、跳んだり跳ねたりする音がひどくなった。
管理組合はXの申し入れに基づいて日常の生活音について配慮することを各住戸に配布するなどし、
XはYと話し合いをしたり、管理会社や警察に相談したが解決には至らなかった。
よって、Xは機材を購入し、騒音を測定したうえ、Yに対して騒音の差止め及び損害賠償を請求する旨の
調停を求めたが不成立となり、Xは改めて不法行為による損害賠償請求権に基づいて、慰謝料200万円等の
支払を求めて提訴した。
判決の要旨
①
本件のマンションは3LDKのファミリー向けであり子供が居住することも想定内のマンションである。
本件マンションの重量床衝撃音遮断性能はLH-60程度であり、遮音性基準よりやや劣る。
②
本件音は毎日Xの住戸に及んでおり、その程度はかなり聞こえるレベルである50㏈~65㏈で、
深夜に及ぶことや長時間連続することもあった。Yは躾けるなどの工夫をし、
誠意ある対応を行うのが当然であり、Yがそのような工夫や対応をとることに対するXの期待は切実であった。
③
Yは床にマットを敷いたがその効果は明らかでない。その一方、Xに対してこれ以上静かにできないなどと
取り合おうとせず、その対応は極めて不誠実なものであった。
そのため、やむなく訴訟等に備え、騒音計を購入して測定するほかなくなり、精神的苦痛を受けた。
以上の諸点、特にYの住まい方や対応の不誠実さを考慮して慰謝料30万円が相当と認められた。
上記の点では、①のマンションの遮音性にも論点があると思われるが、③のYの不誠実さが訴訟に発展した
要件であるので、マンション内での騒音等をめぐり隣人とのトラブルは被害回避への努力をお互いにすることが
大事であると考えます。