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マンションの上下階の音に関するトラブル判例その3・・・・・ 放歌高吟が受忍限度を超え損害賠償請求が一部認められた事例
集合マンションの音に関するトラブルをご紹介させていただいておりますが、
その中で、受忍限度を超えるという文言を使っておりますが、それは明確にコレ!というものは
ないのです。様々な事案を紹介させていただきながらご判断いただくことになりますが。
今回は放歌高吟、つまり周りを気にせず大声で歌うなどのことによる損害賠償請求が認められた事案です。
そして、この事案には親権者としての義務が監督責任として問われたのか。
一緒に考えながらご覧ください。
事案の概要
階下の住人をXとし、Xの親権者をX1、階上の住人をYとします。
YはXの住む部屋の真上にすんでおり、Xが深夜帯に友人等と放歌高吟の騒音をおこし、
Yは適応障害、不眠症の症状を発症するに至ったとして、不法行為に基づく損害
賠償請求として損害金及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めるとともに、
不法行為当時、Xは未成年であったから親権者であるX1には、監督責任があると主張して、
X1に対して、不法行為に基づく損害賠償請求として、損害金及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた。
判決の要旨
Xの責任の存否
Xによる騒音トラブルが続くにつれ、Yの症状は悪化している。
Yはこのマンションに住む前は過呼吸などの適応障害を起こすことがなかった。
このような適応障害がストレスであると考えれば、Xの騒音がYの症状を引き起こしたと考えられるが、
必ずしも直接の原因とは決めかねる。
受忍限度
一般社会生活上の受忍限度を超えるものであったか否か。
そして加害者側の事情と被害者側の事情を加味して判断しなければならない。
①侵害行為の態様とその程度
②被侵害利益の性質とその内容、
③侵害行為の開始とその後の継続状況
④その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等を総合的に判断する
上記の①~④を踏まえて、騒音計による測定結果などの定量的・客観的な証拠はないものの、
関係者の供述などを踏まえて、本件の騒音は、規制値(参考値)を超えるものであったと推認され、
かつXには受忍限度を超える騒音を発生させないように措置すべき結果回避義務があり、
結果回避義務違反の過失があったというべきである。
そして、X1の監督義務に関しては、Xは18歳の学生ではあるが、Yが被った被害とX1との間に
相当の因果関係があったとは認められないとして監督責任には問われない。
結論として、本判決は、慰謝料、アパート転居費用、弁護士費用につきXの責任を認め、
XはYに対し、60万275円及びこれに対する遅延損害金を支払えと判断し、
一方、X1の責任は否定した。