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今、注目すべき判例!家賃保証会社の立替えの有無関係なく解除可能!
まずこのテーマは今後の賃貸借契約に大きな影響を与えることになるでしょう。
それでは早速、この判例の詳細をご説明いたします。
この判例の発端は、平成25年11月に大阪高裁において、保証会社による賃料立替え済みでも、
「賃料不払いに基づく賃貸借契約の解除を認める」という判決に賃借人が上告、受理申し立てを行ったが、平成27年6月26日に最高裁にて上告棄却及び上告審として受理しないことが決定されたものです。
経緯を簡単にご紹介します。
①賃借人Aは建物賃貸借契約時に保証会社と保障委託契約を締結した。
②その後、Aは賃料を滞納するようになり、5か月分の賃料を滞納した。
③そこで、賃貸人はAに対して、滞納開始時に内容証明郵便、そして契約解除の意思表示、建物の明渡訴訟をした。
④一方、保証会社は、保障委託契約に基づき賃貸人に対し、Aの為に滞納家賃を代位弁済した。
⑤この代位弁済が賃貸人に対する賃料の不払いではないとAは主張し、契約の解除事項にあてはまらないと争った。
ここで大阪高裁は、保証会社の保証は、保障委託契約に基づく保証であって、これにより賃借人の賃料の不払いという事実は消えず、賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するにあたり、保証会社の代位弁済の事実を考慮することは相当でないとして、Aの主張を排斥しし、控訴を棄却した。
この裁判の争点はどこかといいますと、
①解除事由の存否、②信頼関係の破壊の有無です。
①本契約書には、「賃借人が賃料等の支払いを2カ月以上滞納すれば賃貸借契約を解除することができる」という条項を
どう解釈するかという点ですが、賃貸人としては賃借人が賃料等を支払うことがなかったという履行遅滞の事実が2カ月あったという主張と、賃借人としては2カ月以上にわたってちんしゃくにんと保証会社のいずれかも支払わない状態が存在することが必要かという主張
②信頼関係の破壊についてですが、保証会社が立替をしているため、賃貸人に何ら不利益が生じていると言えるのか。
そして、保証会社に対する求償保障についても一部弁済があった。
賃借人側の主張ですが、
※貸主が直接の不利益を被っていない。
※賃借人から保証会社に一部弁済が行われている。
※賃借人は精神的な傷病が原因で支払いが遅れたにすぎず、今後改善される。
賃貸人の主張は、
※賃料等が長期間正常に支払われていない。
※保証会社が支払いをしているとしても賃料支払い日から遅れて支払われている。
※賃借人自身に支払意思及び能力が認められない。
※保証会社による保証は、賃貸人の収益の安定と賃借人自身にとっての連帯保証人を用意する負担の軽減であって、保証料の支払いで居住の権利を確保することを目的としたものではない。
※保証料以外を支払わない不当な賃借人を利する一方で、保証会社の破たんを招くこととなり、保証会社を利用していた善良な賃貸人や賃借人が犠牲になる結果となる。
以上の争点と主張に対して大阪高裁は以下の判断を下した。
解除事由の存否に対しては、
賃料の不払いが認められ解約は解除でき、保証会社の代位弁済で賃借人の賃料の不払いの事実を消すことはできない。と判断した。
信頼関係破壊の有無に対しては、
賃借人が賃料の支払いを怠っていることからすると、本件賃貸借契約について、賃貸人と賃借人の信頼関係は破壊されていると認めるのが相当と判断した。