Column
コラム
連帯保証人に対する賃料未払の通知義務は.. 信義則違反と権利濫用
現在の不動産賃貸借契約は、賃貸保証会社の普及で貸主による直接請求の手間も減りましたが、
判例の一つとして覚えておくことも必要かと思いますのでよろしければご参考にしてください。
信義則違反と権利の濫用がこの判例の境目になります。
この事例は親戚(借主)が借りた建物の連帯保証人になって、その親戚が滞納をしていたというものです。
この賃貸借契約は滞納後1年後に契約は解除されました。
そこで解除明け渡し後に貸主が滞納賃料1年分を連帯保証人に請求してきたことによる信義則違反、権利濫用を訴えたものです。
(※なぜ信義則違反、権利濫用で反論したかといいますと、1年分と高額になる前に未払発生時に請求や通知をすれば、ここまで大きな金額にならないのでは!?とその通知をしなかったことが信義則違反、権利濫用。)
この連帯保証人による反論を裁判所はどう捉えたのでしょうか。
結論から言いますと連帯保証人による反論は認められませんでした。
それは
①借主と連帯保証人は親族であり、賃料未払を解消すべき第一時的義務を負うのは当然であり、
貸主には原則として未払賃料が発生するたびに連帯保証人に通知すべき義務はない。
②貸主は、賃借人に対して未払賃料等を請求し、かつ契約を解除していることから、
未払賃料の増大等については貸主に責任はない。
③賃料滞納から契約解除までの期間は1年は貸主が連帯保証人に通知しなかったことを不注意とはいえない。
上記の裁判所の判断で連帯保証人は賃料の1年分の保証責任は免れないのですが、以下のような判例もあります。
東京地裁平成22年6月8日判決
賃借人が継続的に賃料の支払いを怠っているにもかかわらず、賃貸人が、保証人にその旨を連絡するような
こともなく、いたずらに契約を更新させているなどの場合には、保証債務の履行を請求することが、
信義則に反するとして否定されることも有り得る。
東京地裁平成20年12月5日判決
賃貸人は、漫然と本件賃貸借契約を法定更新させ、契約解除が可能なほどの賃料未払が発生した後においても、
契約解除等の措置をとらず、放置したことにより、多額の賃料債務を新たに生じさせたものであるから、
賃貸人が保証人に対してこれらの債務につき連帯保証債務の履行を求めることは、信義則に反し許されない。
このように、事案によっては賃貸人が連帯保証人に賃料未払の状況を通知しなかったこと等を理由として、
未払賃料等の支払請求が認められない可能性があります。
私は、③については少々長いかと思います。
紛争予防の観点からは、賃貸人は賃料未払の事実を連帯保証人に遅滞なく知らせることが重要かと思います。
未払賃料の増大の責任を賃貸人にあると批判されないように早期の対策を心がけることが大事です。