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コラム
所定の書式の発行なしでは定期借家契約は無効である! 賃貸借契約書及び賃借人の認識は別個のもの
まず、借地借家法38条についてご紹介します。
(定期建物賃貸借)
第三十八条
期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、
第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
3 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
要するに今回ご紹介するのは、定期借家契約における発行書類で、
賃貸借契約書と賃借人の認識があったとしても借地借家法第38条2項所定の書式での説明がなければ、
約定期間経過後は期間定めのない契約になります。
それでは判例の概要から紹介いたします。
事案の概要
建物の貸主をYとして、借主をXとする。
YとXは5年間の定期建物賃貸借契約と題する契約を締結した。
本件契約書には、本件賃貸借は契約の更新がなく、
期間の満了により終了する旨の条項(以下「本件定期借家条項」という。)がある。
Xは事前に契約書の原案を検討していた。
契約終了1年前にYはXに期間満了で契約が終了する旨を通知した。
そこで、Xは賃借人は同条2項所定の書面を交付しての説明がないから
賃貸借は定期建物賃貸借に当たらないと主張している。
判決の要旨
上記条文の2項・3項にもあるが、期間の定めがあり、更新のないものとする旨の定めは、
公正証書等による書面で行うものとし、賃貸人が当該説明をしなかったときは、
契約の更新がないこととする旨の定めは無効となる。
紛争の発生を未然に防止しようとする同項の趣旨を考慮すると
法38条2項所定の書面は、賃借人が、当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく、
期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず、
契約書とは別個独立の書面であることを要するというべきである。
よって、本件賃貸借は、定期建物賃貸借に当たらず、約定期間の経過後、
期間の定めがない賃貸借として更新されたこととなる。
円滑な取引などを行うためには、緩やかな基準に基づいた書類での説明も実務では見られますが、
このようなトラブルを未然に防ぐためにも、読み合わせだけでなく、理解をしてもらう説明をしなければ
ならないということを留意いただきたいと思います。