Column
コラム
火災事故の法的責任
今回は、最近よくニュースでも取り上げられる火災事故の際の建物責任者に対する
法的責任がとられた事案です。 人の生活、生命を預かっていくうえで、災害に対する怠慢さが大きな事故を
引き起こす事を、オーナー様、管理会社の方には再認識していただきたい。
事案の概要
歓楽街に所在する5階建ての雑居ビルにおいて、3階EVホール付近から火災が発生。
事故当時、階段やEVホールには各テナントによって置かれた物品が多数あり、店舗内の煙感知器や防火扉も
作動しなかった。そして多くの死傷者が出た。
ビルのオーナーや管理会社の代表者は、本件ビルの階段やEVホールに置かれた物品の撤去や、
煙感知器等の維持管理を適切に行われたなかった。
判決の要旨
①本件ビルの階段やEVホールにおける物品の放置状態が解消され、防火扉が正常に作動するよう
維持管理されておれば本件事故の結果は防げた。
②ビルオーナー及び管理会社は、本件ビルの階段やEVホールにおける物品の放置状態を解消するとともに、
防火扉等が自動的かつ正常に閉鎖するよう維持管理すべき義務があった。
③本件ビルは、不特定多数の人が出入りする雑居ビルであるので、いったん火災が発生すれば、
従業員や客の生命、身体に危険を及ぶおそれが高い構造物で、近隣の火災発生件数や出火事例、
本件ビルの消防用設備の管理不十分な状態についても認識していたことからすれば、
オーナー及び管理会社は本件ビル内での火災発生とその重大な結果につき予見できた。
④オーナー及び管理会社は上記の義務を怠った過失がある。
よって裁判所は、オーナー及び管理会社代表に、業務上過失致死傷罪の成立を認め、
禁固3年、執行猶予5年を与えた。