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コラム
心理的瑕疵の判断基準とその取扱い
これまで、不動産の取扱いによる人の死の告知に関する明確なガイドラインがなかったため、
心理的瑕疵に該当するか否かは裁判事例などを参考にし、個別に判断を行っておりました。
それによって、告知義務、単身高齢者への賃貸の敬遠、所有物件で死亡することによるの売却や賃貸の難しさがありました。
「特に賃貸人による高齢者の入居に対する考え方では日本賃貸不動産管理協会の実態調査では約8割が拒否感を示しております。」
そのような不安やトラブル、事故物件の告知の判断基準となるガイドラインについてご紹介させていただきます。
売買 | 賃貸借 | |||
① | 自然死(老衰、病死等)
日常生活での不慮の死 (転倒・誤嚥等) |
告知必要なし | 告知必要なし | |
② | 上記①で特殊清掃等が行われた場合 | 告知必要あり | 告知必要あり | |
③ | 他殺・自死・事故死等 | 告知必要あり | 事案発覚から概ね3年経過前は告知必要あり | 事案発覚から概ね3年経過後は告知必要なし
ただし※1 |
④ | 買主・賃借人が日常利用する集合住宅の共用部分での②または③ | 告知必要あり | 事案発覚から概ね3年経過前は告知必要あり | 事案発覚から概ね3年経過後は告知必要なり
ただし※1 |
⑤ | 隣接住戸・通常使用しない集合住宅の 共用部分での②または③ | 告知必要なし
ただし※ |
告知必要なし
ただし※1 |
|
※1事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案は告知の必要あり。
※人の死の発覚から経過した期間や死因にかかわらず、買主・賃借人からの死亡事案の有無を質問された場合、
買主・賃借人に把握しておくべき特段の事情があると認識した場合は告知必要あり。
ここで注意したいのは、以下の3件です。
⑥人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引の扱い
⑦輸送先の病院で死亡した場合の取扱い
⑧転落により死亡した場合の落下開始地点の取り扱い
これについては、この度のガイドラインでは整理されておりませんので、引き続き裁判例や事例を参考に個々の判断になります。
そして、告知内容ですが、
◇事案の発生時期(特殊清掃などが行われた場合については発覚時期)
◇事案の発生場所
◇死因(不明である場合にはその旨)
賃貸人・管理業者に照会した内容をそのまま告げること良いとし、無回答や不明の場合もその旨を告げれば良いとしております。
その場合には、亡くなった方や遺族などの名誉及び生活の平穏に配慮し、氏名、年齢、住所、家族構成などの具体的な死の態様、発見状況などは告げる必要はありません。
人の死に対する考え方は各々違いますが、このガイドラインが不動産取引のトラブル回避のひとつの判断基準となり、超高齢化社会のひとつの光になればと考えております。