FAQ 賃貸管理トラブル集

ハウスクリーニング代の請求(特約無し)

ハウスクリーニング代などを明渡し時に借主に請求できるか。契約期間中に設備等が破損した場合の修繕はどちら負担か。

特約等が必要

原状回復には一般にハウスクリーニングの内容は含まれず、それを借主負担とする為には特約が必要である。契約期間中の備え付けの備品に係る修繕は、特約がなければ民法上貸主負担ということになる。契約段階で明確に合意しておくことが必要である。

借主の故意過失による原状回復

築30年の建物で、入居期間5年の借主が退去したところ、ユニットバスの壁が割れており、また、床も漏水を放置していたことから床板が抜ける状態になっていた(このような状態になること又は漏水の事実は貸主も管理会社も一切報告をうけていない)この場合の原状回復の範囲は。

損害賠償も

この損耗と損傷は、借主の故意過失に基づくものといえ、原状回復範囲に含まれる。そして、それによって、壁や床の全面取り換えが必要となっており、これは、いわゆる原状回復の問題を超えて、借主の債務不履行に基づく損害賠償の問題と評価できる状況であるから、借主の行為と因果関係がある一切の損害賠償を請求できる。

管理会社での原状回復の見積もりについて

退去時精算、原状回復費用算出にあたり、借主が見積もり業者を管理会社側できめているのはおかしいと主張。どう考えるべきか。

貸主との委託の問題

原状回復にいかなる業者の見積もりをとり、いかなる業者に行わせるかはオーナーと管理会社間の委託契約の問題であり、その選択肢は管理会社に委ねられていれば、借主の言い分は根拠がない。算出された原状回復費用の金額及び負担割合の問題は協議として考えれば。

畳替え特約(個人契約)

個人を借主とする賃貸借契約において、原状回復義務の内容として、畳替えを借主負担とする特約を締結した。この特約は否定される可能性はあるか。
消費者保護法10条や、明確な合意の不存在により、否定される可能性が高い。

事業者に対する原状回復特約の請求(事例)

貸主と借主はビルの一室について、賃貸借契約を締結していた。なお本賃貸借契約には原状回復を借主とした特約があった。しかし借主は本賃貸借契約終了に基づき本件建物を退去するにあたり、原状回復をすることなく退去してしまった。そのため貸主は、①壁紙取り換え費用として約4万円②フロアマット取り換え費用約4万円を負担した。③未払い共益費等約12万円がある。貸主は借主に対し①から③を当然に請求できるか。
借主は事業者であることから、貸主と借主との間の本件原状回復特約は有効である。したがって、貸主が借主に対して①請求できる②建物の損耗とはいえない場合は協議③当然に請求できる。ただし、①から③の合計金額は約20万円でそれで裁判しても費用倒れになる可能性もある。差押え可能財産も不明である場合もあるのでリスク回避の為に支払催促命令の申し立てからするべきと考える。

残地物の処分

建物賃貸借契約につき、借主(法人)が賃料不払いをして①コピー機(リース物件)②電話機③段ボール数箱を残置して退去した。借主の移転先は不明である。①から③をどのように処理すべきか。

慎重な対処を

借主は①から③の所有権を放棄していると思われるが、そのことが明らかになる書面等がないことから、トラブル防止の観点から、慎重に対処すべきである。まず①についてはリース会社に連絡して引き取ってもらう。②及び③については借主の登記簿謄本記載の代表者の住所に送る。

タバコのヤニの付着

賃貸借契約が終了して借主が明渡した建物を確認したところ、タバコのヤニの天井・壁への付着状況があまりにもヒドイ状態であった。貸主は借主に対し、天井・壁の原状回復を求める訴訟を提起しても問題ないか。

通常損耗を超える部分での範囲

タバコのヤニの天井や壁への付着状況があまりにひどい状態であることが、借主の故意・過失に基づくものである場合は、天井・壁の原状回復を求めて訴訟しても問題ないといえる。ただし、貸主が借主に対して原状回復を求める事ができるのは、原則として自然損耗を超える部分であることからすると、貸主が借主から回収することができる原状回復費用はあまり高額なものにはならないと考える。

原状回復分の返還請求

5年前に退去した借主から、当時の敷金の処理につき、原状回復分を返還せよとの通知が来た。この場合の対処は。

権利の濫用

原状回復の一般論からすると、通常損耗か否かの問題や特約の有効性などを考慮して返還すべきか検討する事になる。しかし本件については、5年前のことであり、敷金の返還の際及びそれ以降のなんの苦情もなく、5年経過して突然に請求がなされたという事情を考慮すれば、借主もその扱いを認めていたと評価する事も可能であり、それを覆す正当事由がない限り、権利の濫用ということもいい得るのではないか。

原状回復をこえた損害賠償

未成年者の借主、親が連帯保証人となっている。家賃の滞納等いろいろ問題があった後に今般中途で(入居後10カ月)で契約を終了し、退去となった。ところが物件を確認したら、ドアの破損、通常損耗とは考えにくいくらいの汚い状況であったため、敷金から当該補修費用を差し引き、それでも足りなかったのでさらに追加費用を請求したところ、本人も親も、そのような負担には応じないと回答がなされた。

請求すべきである。

借主側は、原状回復の問題と損害賠償の問題とを混同している。本件では原状回復というより、明らかに債務不履行・不法行為による損害賠償の問題であって、借主は応ずべき義務がある。また、仮に原状回復の問題としても、通常損耗をこえるものであることから、借主負担であることにかわりない。損害額の算定をしっかり行ったうえできっちり請求すべきである。