FAQ
賃貸管理トラブル集
エアコンのドレンに虫が…
賃貸物件につき、ある居住者からエアコン用のドレンのところに虫が見えたと苦情があり、(特に証拠はない)ネットでふさぐなどの対応をしたところ、その人から、「それでは不十分である、建物全体につき、一切虫などがでないように改良工事を行うなどの抜本的対策をせよ」との要請があった。どのように考えるべきか。なお他の入居者からは同様の苦情は一切ない。
ネットでふさぐなどの措置を講じれば、貸主側の義務を果たした事になり、それ以上の対応は原則不要であると考えられる。借主の要請は、賃貸借契約上の借主の権利ではないことを説明することになる。
屋根の修理を借主の負担とする特約は…
築50年の建物につき、定期借家契約を締結する事を検討している。当該建物の屋根の修繕義務(なお、大規模を含む)を借主の負担とする特約は有効といえるか。
修繕義務は原則として貸主の負担である(民法606条)が、当該規定は任意規定であることから、特約で修繕義務を借主の負担とすることも認められる。そして、小規模を借主負担とsるう特約が有効であることは争いがない。しかし、大規模を借主の負担とする特約が有効であるかは問題であり、最高裁判所の判例も当該特約は、貸主の修繕義務を免除したものに過ぎないとしている。したがって、大規模修繕を含むとしている点については、有効性が問題となる。
破損個所の補修区分 (小規模な破損で門扉機能に影響はない)
1戸建ての賃貸で、借主から門扉が壊れているので、取り換えを要求されている。しかし、契約条件は「現状有姿」であるとともに、当該門扉の破損(小規模な破損で門扉機能に特段の影響はない。)は契約時点から存在し、借主も十分に認識し得たはずである。管理会社としては簡易補修で対応する旨連絡したが、借主は全面取り換えの要求一点張りである。どのように考えればよいか。
相談内容の諸事情のもとでは、借主が全面取り換えを要求することには無理があるものと考える。再度簡易補修での対応に理解をもとめ、それでもだめな場合は、相手方からの法的請求に対し、上記諸事情を主張立証して対抗することも十分に考えうるものと思料する。
貸主は一定期間毎の修繕義務はあるのか
賃貸借契約締結から約20年が経過した建物(居住兼事務所用)の借主が貸主に対し、じゅうたんの取り換え、クロスの張り替え等の修繕を求め、さらに、修繕についての一覧表の作成を求めてきているが、両者間において折り合わない。どのように対処すべきか。
貸主は借主に対し、建物を使用・収益させる義務はあるが、何年間に一度、じゅうたんの取り換え、クロスの張り替え等をしなければならない義務はなく、貸主には、借主が求めている「修繕についての一覧表」の作成に応じる義務もない。そのため、借主には「貴殿の求めには応じる事はできない」との対応をするべきである。
建物の内装の不備による借主からの賃料の減額請求への対応
居住用建物賃貸借契約の建物の内装に不備があり、借主が、当該不備の修繕が完了するまでの間、当該建物の一部を使用・収益できなかったところ、今般、借主から「賃料を全額支払う事はできない」と言い出した。どのように対応すべきか。
本件において、借主は当該建物の一部を使用・収益できなかったことから貸主には賃貸借契約の不完全履行があったこととなり、貸主が借主に対し賃料の全額支払い請求をすることは難しいと思われる。しかし、借主は、当該建物に居住してその使用・収益をしていたことから、借主の「賃料を全額支払うことはできない」との話にも法律上の根拠はない。貸主は、借主が当該建物を使用・収益できなかった部分の賃料を差し引いた金額の賃料を借主に対し請求すべきである。
湿気と損害
戸建ての賃貸で、1年前に配管の水漏れがあったため、補修をした。今般借主が解約したが、当該事故によって湿気が多く家具等にカビが生えるなどしたため、敷金の全額返還と家賃の全額返還を強行に求めてきた。どのように考えるべきか。
退去時に借主の責任による損耗等があればその原状回復費用は敷金から差し引くこともできる。また家賃についても、借主は少なくとも修理後1年間物件を利用し、その間苦情も言ってきていない以上、物件の利用の対価として賃料は当然に発生し、貸主側はそれを返還すべき義務も根拠も見出せない。また家具等にカビが生えたという事に対しては、具体的にその存在及び損額額等と、それが1年前の事故に起因したものであることなどを立証してもらう必要がある。いずれにしても、借主側の主張に対しては、その根拠を明らかにしてもらうとともに、場合によっては訴訟の場で反論していくことになるだろう。
建物賃貸借で借主が新たに建物を建築した場合の権利関係
建物賃貸借であるが、借主が建物を壊して新たに賃貸建物を建てたいとしている。貸主もそれ自体は構わないとしているが、権利関係等で注意すべき点はあるか。
建物を借主が建ててしまうと、建物の所有権が借主に帰属し、借地関係が発生しかねない。したがって、あくまでも建物は貸主が建ててそれを賃借する形にし、権利の所在、建築費用や退去時の処理について契約で明確に決めておくことが大切である。
店舗物件で、借主が増築を希望し、貸主も承諾した場合の注意点
店舗物件で、テナントが一部建物の増築を要請し、貸主も承諾している。この場合の賃貸借契約で特に注意すべき点は何か。
退去時に、当該増築部分が造作買取しないし有益費償還請求の対象となりうるので、その扱いをあらかじめ決めておく(それらの権利を排除する特約は有効である。)また、当該増築部分の管理や、その増築部分において事故が生じた場合の責任などについても、あらかじめ決めておくことがのぞましい。
シロアリ被害の責任
シロアリにより建物の基礎部分の被害が発生した。借主が窓を開放し続けることから侵入し繁殖したとも考えられる。この場合、補修費用等は誰が負担すべきか。
シロアリ被害の原因が100%借主の不注意によるものと立証できる場合には借主の負担となるが、その立証は困難である。まどの開閉についても、住居として使用する以上、窓の開閉があることは通常の使用方法であり、直ちに過失と認められるわけではない。したがって、建物の主要構造部分であることも考えれば基本的には貸主が負担する事とし、借主側に何らかの落ち度があれば応分の負担を求めるという形で協議していくべきではないかと考える。