FAQ 賃貸管理トラブル集

高低差のある隣地より雨水が入り込んだことによる損害

A所有の甲土地に甲建物が建っており、その隣地にB所有の乙土地に乙建物が建っている。なお、甲土地と乙土地は、甲土地の方が約30㎝高くなっている。今般、BからAに対し、「甲土地から乙土地に大量の雨水が流れてきており、乙土地の地盤が緩んでしまっている。場合によっては、今後、乙建物が倒壊する危険性すらある。甲土地から乙土地に雨が流れないような工事をしてほしい、なお、今後、乙建物が倒壊した場合、損害賠償責任を請求する。」との話があった。本件において、AがBに対し損害賠償責任を負う可能性はあるか。
将来、乙建物が倒壊し、その原因が「甲土地から乙土地に大量の雨水が流れたがために乙土地の地盤が緩んだこと」にあり、Bがその立証出来た場合は、本件に於いてAがBに対し損害賠償責任を負う可能性もある。ただし、実際上は、その立証は困難であると考えられる。

借主による設備の無断撤去による復旧要請

音楽スタジオとして借りている借主につき、点検等のため専用部分内に立入ったところ、警報器等が撤去されている事が判明した。早期に復旧するように要請したが応じる気配がない。どのように対応すべきか。
警報器の設置が義務付けられている以上、その撤去は借主としての善感注意義務違反と評価される。特に警報器の設置は専用部分のみならず建物全体の安全の観点からも重要であることから、その無断撤去と、是正に応じない姿勢は信頼関係破壊と評価できると考える。したがって、契約の解除も辞さない姿勢で、改めて設置を要請し、それでも応じない場合には解除・明渡しを求める事になるのではないか(貸主側としても十分な対応をとっていないと、第三者に被害が生じたときに工作物責任や債務不履行責任等の観点から問題とされうる)

借家人賠償保険への加入を義務付けは可能か

建物賃貸借契約には「借主は火災保険に加入する。」旨の条項があるにもかかわらず火災保険に入らない借主がいる。当該借主を火災保険に強制的に加入させる手段はないのか。
借主に火災保険に入ることを法律では直ちには強制し得ない。また、未加入は契約違反行為であるが、そのことだけをもって解除する事も困難である。引き続き契約の履行としての火災保険加入を要請していくことになろう。

普通借家契約から定期借家契約への移行

普通借家契約で2回更新し、4年後に契約を終了させることを原則として、場合にはよっては定期借家契約に移行するという契約は可能か。

切り替えはできない

平成12年3月1日より前に締結されたものについては、居住用は現在の借地借家法では定期借家契約への切り替えはできない。普通借家契約で法的には意味はないが、原則4年後に更新しない旨合意しておき、正当事由の判断を有利にするようにしておく。

解約申し入れは口頭でも可能か

可能だが

法律上は口頭でも可能ですが、解約申し入れ日及び解約の効力が生じる日を明らかにすべく、出来るだけ書面での解約申し入れをすべきです。

まだ未完成のマンションの賃貸契約の締結は可能か

建物がまだ未完成であることから、賃貸借の目的となる建物が存在していないことから、同建物を目的とする賃貸借契約を文章で締結する事はできない。したがって、予約契約ないしは建物引き渡しを停止条件とする契約とすべきである。

無断転貸の解除方法

資材置き場の賃貸借契約の借主との連絡がつかない。しかし、同借主が無断転貸ないし無断譲渡したと思われる専有者が賃料相当額を支払ってきているので損害はない。貸主としては借主と賃貸借契約を解除して、現在の占有者との間で賃貸借契約を締結したい。(占有者もその意向である。)どのようにして借主との契約解除をしたらよいか。

解除通知をする。

無断転貸ないし無断譲渡に基づき、借主との契約を解除する。解除の方法は、まずは、①借主の登記簿謄本上の本店に解除通知を送る。②借主の代表者の自宅に解除通知を送る。③意思表示の公示送達を利用する。

サブリース会社の倒産による業務継承

一括借り上げ物件で、サブリース業者が民事再生手続きを開始し、その結果、サブリースの原賃貸借契約は解約となって、エンドユーザーとの賃貸借契約をオーナーが承継する事になった。オーナー代行でテナントにその旨連絡したところ、旧貸主(サブリース業者)からの通知でないと受け付けられない旨の回答がなされた。どう対応すれば。

権利義務関係の明示

貸主の変更通知は、旧貸主及び新貸主の連名で行う事が望ましい。ただし、民事再生手続き中であり、再生会社がなかなかそのような通知書まで作成する余裕がないケースもあるので、そのようなやむえない場合には、例えば新貸主からの通知書に、オーナーとのサブリース業者との間に賃貸借契約の解約合意書のコピーなどを添えて、権利義務関係の承継の事実を明らかにする事が考えられる。

賃貸借契約後、入居前の借主からの解除による決済金の返還請求

賃貸借契約をし、貸主・借主の署名等はあるが、保証人の署名等はまだない。ところが契約の2日後(実際の入居前)借主から取りやめるとの連絡があり、前家賃、敷金等、媒介手数料を全額返せと請求された。どのように考えるべきか。

契約は成立している。

賃貸借契約は貸主・借主の合意により成立し、保証人の署名押印等がないとしても成立する。(そもそも保証契約は賃貸借契約と別個の、貸主と保証人との間の契約である。)したがって、本件は、賃貸借契約は成立したのだけれど実際の入居前に解約された場合の精算の問題ととられる必要がある。中途解約の場合の30日前通知の規定と趣旨や、契約成立後の一方的な解約により空室期間が発生する事に対する損害賠償の観点などから、当然に全額返還とはいえない。