FAQ
賃貸管理トラブル集
借主死亡であるが賃料は振り込まれている、自力救済は可能か
建物賃貸借の借主が当該建物内で死亡した。警察から事件性はないと連絡があったが死後1ヶ月経っている。ところが、借主が亡くなってからも賃料が振り込まれており、どうも借主の兄が振り込んでいるようである。当該建物には悪臭がキツイ事から、貸主としては早々に当該建物の原状回復をしたいところであるが、現在の状況の中、貸主の原状回復をすることには法律上の問題を生じるか。
当該賃貸借契約は法定相続によって相続人に承継されていることから、まず、当該借主の相続人を探す必要がある。そして、その相続人に連絡して合意解約をして原状回復してもらう必要がある。(なお、今後、賃料不払いとなった場合は契約解除する。)なお現在の状況では原状回復することは自力救済禁止に触れて、原則として違反である。
建物の原状回復工事に関し、工事業者から請求される報酬請求権の消滅時効期間は
民法170条の規定により、工事が終了したときから3年の短期消滅時効にかかる。
外階段の老朽化(相場より安い賃料)
倉庫の賃貸で、1階と2階をつなぐ外階段が老朽化して事故の危険性がある。ただし、家賃は相場より格安になっている場合、借主に対し、修繕義務を全面的に負わせることは可能か。
修繕義務につき、特約で一定範囲を借主負担とさせることは有効であり、本件のように賃料が低廉であれば、より問題は少なくなる。ただし、当事者間での修繕負担という意味ではそれでよいかもしれないが、第三者に事故などが発生した場合の工作責任の観点からは、貸主負担でもよいから、早急に修繕しておくべきである。管理業者においては、最低限その旨を指摘し、しかるべき対応をとるように促しておく事が重要である。
震度5以上で倒壊のおそれのある建物の賃貸する場合の注意点
媒介における重要事項として、耐震診断の結果を説明する事になる。ただし、貸主や管理業者としては、それだけでは、万が一地震が現実に起きて倒壊した場合に、工作物責任や債務不履行責任を問われた時、免責されるかは疑問である。阪神大震災時にも工作物責任が認められた判例などを参考にしつつ、できれば、一定の耐震補強等をした後に賃貸に供する事が望ましい。仮にそれが出来ない場合には、少なくとも耐震対策を検討している状態にするとともに、管理業者としてもその助言等をしていることを明確に残しておく事が大切だろう。
アパートの屋根の雪が落ちて車に損害が生じた場合の責任
貸主には工作物責任的要素があるが、天災・不可抗力の部類に入る。しかし、土地柄からある程度雪の量等が予見でき、結果回避の処置をオーナー側の義務とすることができるのであれば、債務不履行責任が発生し得る。また、雪の落下が建物の構造上の瑕疵等に基づくものであれば、工作物責任も考えられる。したがって、オーナーとしては、上記責任が100%発生しないというこうとが言えない場合には、一定の見舞金レベルの対応は必要ではないか。(全損害を賠償する事は、原因の競合一末未曾有の雪+貸主としての債務-と考えられるため、法的には理由なしと考えられる。)管理会社は、管理業務として雪による損害回避までを受任していたのかが問題であり、その点が委託の範囲ではなく、緊急行為としても想定し得ない場合であれば、一般には借主・オーナーとの間で責任を負うことはない。(債務不履行・不法行為責任上の違法性・過失なし)
土地を事業者に一括して貸す場合、所有者の工作物責任は
一次的には、占有者の責任が問われるケースが多いと考えられる。
敷地内駐車中の単車等による事故の責任は
借主がオートバイを敷地に止めている。貸主はそれ自体はかまわないとしているが、近所の子供たちがよく遊びに来ている。万が一オートバイが倒れて怪我などした場合、貸主にも責任はあるのか。
工作物責任の見地から、当該部分が駐車場としての設備部分(土地の工作物)であると評価されれば、その設備に瑕疵があれば土地所有者に無過失責任が生じる。ただ、あくまでも瑕疵が必要であり、かつ実際の場面では被害者側の過失が考慮されるため、所有者としては、当該駐車スペースにつき、いたずらしないような注意書きや容易に入れないような一定の囲い的な物も用意し、瑕疵がない、あるいは怪我は被害者側の過失によるところが多いと主張できるようにしておく。あわせて賃貸借契約上にも、万が一被害者との関係で大屋側が損害賠償した場合には、借主側に求償できるようにしておく必要がある。
建物の内装の不備による借主からの賃料の減額請求への対応
居住用建物賃貸借契約の建物の内装に不備があり、借主が、当該不備の修繕が完了するまでの間、当該建物の一部を使用・収益できなかったところ、今般、借主から「賃料を全額支払う事はできない」と言い出した。どのように対応すべきか。
本件において、借主は当該建物の一部を使用・収益できなかったことから貸主には賃貸借契約の不完全履行があったこととなり、貸主が借主に対し賃料の全額支払い請求をすることは難しいと思われる。しかし、借主は、当該建物に居住してその使用・収益をしていたことから、借主の「賃料を全額支払うことはできない」との話にも法律上の根拠はない。貸主は、借主が当該建物を使用・収益できなかった部分の賃料を差し引いた金額の賃料を借主に対し請求すべきである。
駐車場をコンテナボックスの置場として賃貸する場合
ガレージを2台分同一人物に賃貸することを検討しているところ、借主予定者は、1台分は駐車場として使用する予定であるが、もう1台分はコンテナボックスを置きたいとの話をしている。この場合においての注意点は
ガレージを含む駐車場は賃料が高くない一方で、賃料が未払いとなって車が放置された場合の貸主のデメリットが大きい。仮に、借主が賃料を未払いとしてコンテナボックスを放置した場合には、その撤去費用は実質的に貸主が負担する可能性が高い点に注意。