FAQ
賃貸管理トラブル集
エアコンに関しての特約
事業用物件で、前の借主が10年使用した業務用エアコン付きで貸すことを予定している。契約、中途故障した場合の修理費用は借主が100%、取換え費用は貸主と借主が折半で負担するとともに、買取請求をしないとの特約をしようと検討中。この特約は問題ないか。
いずれの内容も、当事者間での合意があれば有効である。その際には、エアコンが10年使用したものであることなどを知らしめた上で、上記内容につき十分説明の上、契約することが大切です。
貸主の修繕義務を放棄できるか
貸主が所有する古い建物を賃貸するにあたり、貸主が修繕義務を負うのは嫌だと言い出した。修繕義務を借主の負担とする特約は有効か。
正当化要素と借主の納得が必要
修繕義務は貸主の義務であるが、契約の自由の原則から、特約で借主の負担とすることはできる。ただし、単に契約書に「修繕義務は借主の負担とする」との内容を条項に設けるのみでは足りず、借主が真に納得して特約につき合意したこと、及び、修繕義務を借主の負担とすることの正当化要素が必要である。そこで、貸主と借主との間の賃貸借契約書に①現在は当該建物に修繕を要する部分はないが、当該建物が古い物件であることから、今後は修繕が必要な部分が出てくることが想定されること、②(①を借主が十分認識した上で)修繕義務を借主の負担とすること、③(修繕義務を借主の負担することに対応して)賃料の家賃を相当額引き下げるなどの内容の特約条項をいれておくことが重要である。
構造上の問題の説明がなかった場合(エアコンスリーブ等)
賃貸マンションで、借主がリビングとして使用している部屋にエアコンを取り付けようとしたところ、構造上の問題で取り付けることができなかった。業者に対しても「説明がなかった」としてクレームがきている。どのように対応すればよいか。
最終的には建築会社にも
リビングルームにいかなるエアコンも設置できないというのは、貸主側の居住目的に従い物件を使用させるべき義務に反すると評価される余地がある。また構造上の問題とはいえ、一般的な注意義務をもってそのような不具合がわかる場合には、業者の調査説明に係る過失責任も問われる余地がある。代替物件の提供等で対応を図るとともに、そもそも原因が設計施工上のミスにある可能性が高いので、最終的には建築会社にも応分の責任を求めることが考えられる。
地震による破損による補修負担
地震により、備え付けのレンジが落下したり、人が転んだりしたことによって壁に穴があいてしまった。補修は貸主又は借主のどちらの負担になるのか。
破損の原因が地震であり、かつ、レンジの落下等が借主の注意義務違反と評価しにくいため、原則として、賃貸借契約上の貸主の修繕義務の範疇に入ると考えられる。
貸主による保存行為
排水設備につき、汲み取りから下水道に変更する工事につき、借主の一人と連絡が取れない。ただし、借主は物件をしようしている。借主の承諾無くして立ち入り、工事をすることができるのか。
当該工事は保存行為に該当し、借主は当該工事の実施につき拒否できず、かつ、それに付随する立ち入りも、正当な理由なく拒否できない。したがって、再度、工事の時期、借主に応諾義務があること、時期的に変更が必要であればすぐに連絡すること、連絡がなければ保存行為の一環として立ち入り、工事を実施することを書面で通知しておく。
シロアリ被害(事業用テナント)
事業用賃貸借で内部造作はテナントが行う。今回建物でシロアリ被害が生じた。この場合の対応につき、どのように考えればよいか。
原則貸主負担
シロアリの発生原因がテナントの工事箇所である内部造作であることが特定できれば、テナントの不法行為等も想定し得る。ただし、現実問題としてそのような特定は難しいため、その場合には修繕の基本的な考え方に基づき、原則貸主負担で対応するが、特約があれば、一定範囲をテナント負担とするこ可能ということになる。契約に、修繕の負担を明確に取り決めておくとともに、テナントの造作に基づく損害については、テナント側が責任を負う旨、取り決めておくことが考えれらる。
シロアリ被害(衣服の損害賠償)
木造8世帯の賃貸アパートのうちの1つの世帯から「シロアリの被害が出た。服をたべられてしまったので、損害を弁償してほしい」との申し入れがあった。この申し入れにどのような対応をすればよいか。
本件において、貸主に損害賠償責任が認められるには、貸主に「過失があった」といえる場合でなければならない。しかし、本件において、貸主は勝手にアパートの部屋に入って「シロアリ被害の有無の調査をすることは出来ず、また借主が通知義務を果たしていたかが疑問である。」とするならば、まず貸主に過失がなかったから損害賠償責任も認められない。との回答をして借主の反応をみることで足りると思われる。
シロアリ被害(解約後の引越し費用との請求)
一戸建ての賃貸でシロアリが発生した。借主は退去を申し出ているが、その場合の引越し費用等は貸主で負担する必要があるのか。
過失によって
シロアリの発生によって客観的に居住不可ということであれば、契約の解除に合わせて、損害賠償請求が可能となる。そして、この損害の中には、転居に必要不可欠な費用である引越し費用も含まれ得ることから、貸主が負担せざるを得ないことになる。ただし、シロアリの大発生を借主が放置していた過失などがある場合には、過失相殺や、そもその借主側の過失による損害ということで、貸主に請求できない場合も考えられる。
古い建物で壁紙がはがれた。この場合の修繕義務は。
契約期間中の修繕は、特約がない限り、貸主側の義務である。ただし、躯体構造部分とは関係なく、かつ、生活を維持する上で直接支障がない部分については、古い物件であることと、家賃との兼ね合いから、貸主の修繕義務は免除される場合もあるだろう。