FAQ 賃貸管理トラブル集

借主が法人である場合に入居者の印鑑証明を受領しなくても問題ないか

建物賃貸借契約の借主が法人であり、当該法人の社員が社宅として居住する場合において、当該契約の締結に事務代行会社が係る場合がある。この場合において、当該事務代行会社から「事務手続きが煩雑なので、居住者の印鑑登録証明書は徴収しない扱いにしてほしい」との申し入れがあった。問題ないか。
当該賃貸借契約の契約者は借主たる法人であることから、居住者の印鑑登録証明書は法律上は必ずしも必要なものではない。そのため、あくまでも居住者の印鑑登録証明書を徴収するか否かは貸主の判断である。

アスベストを使用していたことが後日発覚した場合

建物賃貸借を締結するに当たり、当該建物につき、アスベストの調査をしていないので、「アスベストの調査はしていない」と重要事項説明書に記載した。しかし借主から、「駐車場の天井にアスベストのようなものが見て取れる」と言われて確認したところ、確かにアスベストのようなものが確認できた。そのため、借主と話し合い、賃料を月額5,000円下げて賃貸借契約を締結する事にした。現状、賃貸借契約についての重要事項には、上述のとおり、「アスベストの調査はしていない」との記載しかないが、この記載のみでよいか。
重要事項説明義務としては、「アスベストの調査はしていない」との記載で足りる。しかし、後々、「当該アスベストを原因として事故が起きた」として損害賠償請求等がなされた場合に備え、借主がアスベストの存在を認識していたことを明らかにしておくため、重要事項説明書に「貸主は、借主の指摘を受けて当該建物の駐車場の天井を確認したところ、アスベストのようなものを確認したことから、貸主と借主は、この賃貸借契約についての賃料を月額5,000円引き下げることに合意した」旨の内容の記載をしておいたほうがよい。

定期借家契約の解約に関して

以下の①~④の場合は貸主はどのような対応をすべきでしょうか。


①「通知期間」内に貸主が通知を怠った場合

②借主から賃料の値下げの要求があった場合、それを理由に6ケ月前の予告で
解約をすることが可能か。

③家具付きの定期借家契約をしていますが、解約時に家具を借主の負担で処分するを
義務つけることは可能か。

④宅地建物取引業者である貸主が直接借主と定期借家契約を結ぶ場合と、
宅地建物取引業者が媒介する場合の違いは。
①「通知期間」経過後であれば、通知をしたときから6ケ月を経過すれば終了します。

②特約で賃料増減請求権を排除していない限り、借主は賃料の値下げ請求する権利が
  ありますので、定期借家契約といってそれを排除することはできませんし、
それを正当事由として解約することはできません。

③解約時に家具を借主の負担で処分する契約は可能です。
  ただし、消費者に不利益な特約であるため、その合理的な理由と契約前に十分な説明
  及び借主の承諾が必須となります。

④宅地建物取引業者であっても貸主として貸す場合は宅地建物取引業法の適用は
  ないので、重要事項説明の義務はありませんが、定期借家契約としての
 事前説明義務はあります。(借地借家法第38条2項)
  媒介する場合は重要事項説明と定期借家契約である旨の重要事項説明義務が
  あります。

契約の成立は!?

建物賃貸借の借主予定者が賃貸借契約の申し込みをした。その後、借主予定者は、契約書に捺印して借主予定者側の仲介業者に契約書を郵送し、敷金・礼金・1か月分の賃料を支払った。ところが、その後、借主は当該申し込みを撤回することとなり、貸主予定者側の仲介業者に対し、その旨を伝えた。すると貸主予定者側の仲介業者から、「すでに貸主予定者に契約書を送ってしまった。もう契約が成立していることから、申し込みの撤回ではなく、賃貸借系やウkの解約申し入れの問題である。よって、貸主予定者が借主予定者から受領した金員は返還しない。」との回答があった。(なお、当該賃貸借契約における解約申し入れは「1カ月前」である。)この貸主予定者の言い分には法律上の根拠があるか。
賃貸借契約は貸主と借主の合意によって成立するが、本件においては契約書の作成を前提としていることから、契約書を作成して貸主及び借主が当該賃貸借契約に記名捺印した時に契約が成立したものと判断されることになると思われる。
本件では、借主予定者から「申し込みを撤回する。」との意思を伝えたのは、貸主側の仲介業者が「貸主予定者に契約書を送った」段階であり、この時点においては、貸主本人が当該契約書に記名捺印をしていたかは明らかではないが、貸主予定者が「この時点において当該契約書に記名捺印をしたいた」と言われれば、借主予定者側でこれを覆す証拠を入手することは難しく、貸主予定者側の言い訳が通る可能性が高いと思われます。そして、この貸主側仲介業者の言い分を前提とすると、「貸主予定者が借主予定者から受領した金員は返還しない」との言い分には、法律上の根拠があることとなる。

土地の賃借権であるという当事者の意思が必要!

土地の賃借権(レンタカーの車両置き場)であるが、テナントから営業所・連絡事務所的な使用に供するため、
簡易の建物を建てたいとの申し出があった。当該建物が存在することによって借地借家法の適用がある借地関係になっても問題ないか。
借地関係は建物所有目的の土地賃貸借につき成立する。したがって、本件では、建物所有目的ではなく、
当該建物は土地の使用に付随して必要な最低限度の施設であるという位置づけにすれば、借地関係とならないと考えます。
契約書にもその旨を明記し、あくまでも民法上の土地賃借権とすることが当事者間の意思であることを明確にすることが望ましいい。

契約の内容を明確にすることで、借地借家法を回避

広大な土地を賃貸することを検討している。借主は当該土地で中古車販売業を営むとのことである。
この土地にはほんの一部、小さいプレハブのような小屋が建っている。
この場合、当該土地を賃貸した場合は借地借家法が適用されるのか。
土地の賃貸借において借地借家法が適用されるのは、借主が「建物を所有する目的」である場合である。
本件において「借主は当該土地で中古車販売業を営む」とのことであるから、
基本的には「建物を所有する目的」ではないと考えれる。
ここで注意ですが、「本件小屋」の賃貸借と言われると借地借家法の適用になる恐れがあります。

安易な合意書の取り交わしによって不利益が生じる土地賃貸借契約

調整区域に所在する土地の賃貸借契約(なお、中古車販売業を営む目的で建物所有目的以外と明記されている。)を締結したが、借主が貸主に無断で当該土地に建物を建ててしまった。その後、貸主は借主に対し建物の撤去・土地の明渡しを求めたが、結局、貸主は借主と「土地を明け渡す際に建物を取り壊す」との内容の合意書を交わしてしまった。貸主はこれから借主に対し、建物撤去、土地の明渡しを求めることができるのか。
当該建物が調整区域にあるとはいえ、貸主は借主と「土地を明け渡すときに建物を取り壊す」との内容の合意書を交わしてしまっていることからすると、貸主と借主との間に建物所有目的の土地賃貸借契約が成立していると解される可能性がある。
したがって、本件において、貸主がこれから借主に対し、建物撤去・土地明渡しをもとめることは困難である。

事務手間を省かずに段取りを組んだ契約でリスク回避を

土地所有者Aはレンタカー会社Bと(建物所有目的ではない)土地の賃貸借契約を締結した。
その際、レンタカー会社Bは土地にプレハブのような簡易な建物(未登記)を建てて使用してきた。
この度、AとBは当該賃貸借契約を終了させることとなり、レンタカー会社Bは建物を取り壊して所有者Aに土地を明け渡すことになっていた。ところが、次の土地の借主であるCが建物を使用したいので取り壊さないでほしいと要望を出した。
そこで、所有者Aは新借主であるCとの土地の賃貸借契約の締結、旧借主であるBのCに対する建物の所有権譲渡という方法で本件を処理しようとしている。問題はあるのか。
土地上にC所有の建物が存在していると、将来にCが「この土地についてのAとの契約は(建物所有目的の)賃貸借契約であるから、借地借家法の適用がある」と言い出しかねず、もしそのようなことになれば、問題が複雑になる。
したがって、土地所有者Aは以下の契約を結び、今後の起こりうる問題を回避できる方法をとるべきである。
①土地についてのBとの賃貸借契約の合意解約。
②建物をBから所有権移転譲渡を受ける。
③建物が建っている土地部分以外の土地について、Cと賃貸借契約を締結。
④建物についての定期借家契約の締結

抵当権の設定を説明せず実行された場合の業者の責任

建物の賃貸借契約締結の際、借主に対して、当該建物に抵当権が設定されているをせつめいしなかった。そして当該建物が競売に付されたが、このまま競売が進んで行った場合、宅建業者は責任を負うか?

宅建業法第35条

賃貸借建物に抵当権が設定されている事実は重要事項説明事項(宅建業法35条)であることから、「当該建物に抵当権が設定されていることを借主に説明しながった」場合には重要事項説明義務に反する事となる。したがって借主に損害が生じれば宅建業者は責任を負うことになる。