FAQ 賃貸管理トラブル集

経営判断による立ち退き請求は正当事由か。

他の物件を借りて自宅兼事務所として使用していた貸主が、業務縮小のため、当該建物を解約するので、現在他人に貸している物件の立ち退きを求めたいとしている。自己使用なので当然に正当事由が認められるといわれているが、はたして大丈夫か。
自己使用の必要性があるとしても、借主側の利用継続への期待も尊重する必要があり、判例ではこの場合でも立ち退き料を必要としている。そもそも今回の立ち退き要求は、貸主側の経営判断に基づくものであり、自己使用の必要性といっても、相当割引かれて評価される可能性がある。

法人借主が破綻、立ち退きが完了していない。どのように対処すべきか。

破産管財人に対し、早期の立ち退きを求める。破産開始決定後も占有を継続していれば賃料(相当損害金)が発生し続け、これは財団債権になって、破産財団にとって大きな重荷となる。管財人に催促して、早期に立ち退き完了をもとめ、かつ、破産開始決定から今までの間の賃料を、月払いの原則に従い支払うように求める。

目的違反による契約解除の方法

整体院として使用する事を目的に賃貸していたところ、エステ系の業務を行い、水を大量に資料している。借主に対し、目的違反を告げて契約解除を求めたところ、借主も口頭では非を認め、了承している。今後どのように進めていけばよいか。

即決和解

契約終了の合意ができるのであれば、解約合意書を作成し、契約終了の確認、明渡しの時期の決定及び履行の確約、原状回復等の費用負担、残地物の処理方法につき明確にしておく。場合にはよっては、即決和解手続きを利用して、和解調停をしておく。もし契約終了につき前言を翻すのであれば、和解調書をもとに強制執行が可能となる。

即決和解とは(訴え提起前の和解)

即決和解は、訴え提起に至る前に、当事者双方が簡易裁判所に出頭してなす訴訟上の和解である。(民事訴訟法275条1項)訴訟上の和解なので、和解調書には確定判決と同一の効力がある。正しくは「訴え提起前の和解」というが、通常1回の期日で直ちに和解が成立する事から「即決和解」とも言われている。紛争が生じたけれども、裁判所外で既に示談が成立しあるいは示談成立の可能性がある場合に、示談内容を即決和解手続きの中で、和解調書に記載して債務名義(強制執行の根拠)を得るために利用されることが多い。請求内容に制限がないので、土地建物の明け渡しについても利用されている。即決和解の申し立てにあたっては、成立の見込みのある和解条項案を申し立て書に添付する事になっている。期日に和解が成立すると、和解内容を裁判所書記官が調書に記載する。和解の期日に当事者が出席しなかったり、出席しても合意に至らなかった場合には、即決和解の手続きは終了する。このとき当事者双方が訴訟で争う事を申し立てた場合には、即決和解の申し立て時点で訴えを提起したものとされ、訴訟手続きに移行する。

更地での売却希望のための更新拒否は可能か

オーナーが高齢で介護を要する状態になったため、物件を処分したいと考えている。できれば建物を壊して更地で売却したいが、現在借主が数人居住している。順次更新時期にきたら更新拒否をして明渡しをさせていきたいと考えているが可能か。
自己使用の必要性という更新拒否の主たる正当事由の要素がないため、借主側が了解しない限り、更新拒否は認められる可能性は少ない。賃貸物件のまま処分するか、どうしても明渡しを求めているのであれば、一定の立退き料を負担して合意解約で対応していくしかないものと考える。

契約解除として明渡しを進める事が可能か

家賃滞納が3カ月あったことから契約解除し、滞納賃料の支払いを求める通知したところ、2ヶ月分を入れてきた。その後も借主は物件を利用し続けているが、契約は解除されたものとして進める事は可能か。
契約解除の時点で契約違反行為があり、信頼関係破壊の要素が満たされていれば、その後に賃料等を入れてきた場合でも解除は有効とされた判例がある。ただし、だからといって強制的に明渡しを行うのは自力救済禁止に触れるので、まずは改めて明渡しの請求をし、場合によってはその協議の中で解約を合意した旨明確にしておく。またその協議に応じない場合には、まだ1ヶ月分の滞納があるので、その分の支払督促等を行い、異議が出されれば訴訟に移行した段階で合意解約を含めた和解を取り付けるという方法も考えられる。

追い出し行為

平成22年に多額の賃料を対応して退去して行った借主(なお、平成24年に破産宣告をうけた)から、今般、「平成22年、貴社は私に対して悪質な追い出し行為を行ったことから、私が被った損害を賠償してほしい」との内容のFAXが送られてきた。無論、当時、当社は「悪質な追い出し行為」など行っていない。いかなる対応をしたらよいか。
管理業者から法的手続きをとるとするならば、債務不存在確認請求の訴訟を提起することとなるが、そこまでの労力をかけることを要する事案とも思えない。まずは無視して、仮に相手方が法的措置をとってきたら対応するとのことで十分と思われる。

退去日に連絡が取れなくなった場合 (残地物)

契約が終了し、借主自身は退去したが、中に借主の所有と思われる物が残っている。この場合、明渡しが完了していないとして中の物を引き取るまで賃料が発生すると考えてよいか。
確かに明渡しが完了していない以上、契約は継続したままと考えれば賃料を請求する事は理屈上可能である。ただし、契約が継続していると考えると、仮に借主が戻ってきた場合、退去を求めるためには改めて契約終了明渡しの手続きが必要となってしまう。したがって、この場合、残地物がある事によって契約終了後も占有が継続しているとして、「賃料相当損害金」が発生すると考えた方がよいのではないか。

家賃滞納による契約解除 (本人が刑事事件で拘留の場合)

家賃滞納があり本人との連絡がとれず、保証人とも連絡が取れないため、契約を解除し、明渡しを求めようと考えている。ところが借主本人が刑事事件で拘留されていることが借主の親族からの情報で判明した。どのように対応すべきか。
既に家賃滞納があり、解除の実質要件もそなえていると考えられることから、弁護人が選任されているのであれば弁護人を通じ、あるいは接見をして、解除ないし合意解約を取り付け、あわせて中の物の処分方法についても取り決めをして対応する。まずは親族に、弁護人の有無等や、接見可能かなどを確認の上対応されたい。

家賃滞納で、借主が当該物件を使用している様子もない場合

賃料を未払としている建物賃貸借の借主と連絡をとれなくなった。また、借主が建物に戻ってきている様子もない。
このような場合においても、借主に対し、建物の明渡しを求める場合、契約解除の意思表示からする必要があるのか。
借主が貸主に対し、当該建物の占有を移転したとの事情がないことから、貸主は借主に対する契約解除の意思表示からする必要がある。なお、貸主が契約解除をしないで建物の鍵交換等を行った場合、原則として法律上許されない自力救済に該当する可能性がある。