FAQ
賃貸管理トラブル集
マンションオーナーが被後見人となった場合
(1)マンションのオーナーが被後見人となった(後見開始の審判をうけた)(2)マンションは、オーナーの息子が出張時に一時的に使用する事がある。(3)当該マンションについて、オーナーの息子が勤務する会社との間で賃貸借契約を締結しようと思うが、当事者のみで行う事は可能か。
裁判所の許可
裁判所の許可を要する場合があるので、当事者のみでは行われず、裁判所への確認を経てからにせざるをえない。居住不動産の処分については、家庭裁判所の許可が必要であり、本権は賃貸用と思われるものの、物件状況及び当該許可が不要とされるか否か明確ではないので念のため確認を経てから(裁判所の許可を得てから)行うべきであろう。
借主が未成年者であった場合の取り消し
アパートの一室の借主らが未成年であった。(親権者の同意もなく、賃貸借契約も交わされていない)現在、当該借主らは、当該部屋から退去しているが、今般、当該賃貸借契約の取り消しをする旨のほか、①支払済みの賃料約12万円の返還を求める旨、②未払いとなっている賃料約12万円は支払わない旨が記載された通知書が送られてきた。①支払済みの賃料約12万円を返還する必要があるか、また②未払いとなっている賃料約12万円を請求する事はできるか。
民法121条
未成年による当該賃貸借契約の取り消し効果を貫くと①12万円は返還し、②12万円は請求する事ができないとの結論となる。ただし、当該未成年者らは、現に当該建物を使用・収益したとの利益を得ている以上、その返還義務を負わず、かつ未払い分も請求可能との解釈は可能ではないか。
居住用マンションを施設的用途として利用させる場合の他の居住者への配慮
賃貸マンションに数件の空室がある。今般精神に障害のある方の自立支援等を目的とするNPO法人が契約者となり、精神に障害のある方の居宅として物件を借りたいとの申し出があり、貸主も了解している。しかしその物件はもともとファミリー向けで、現在の居住者においてはそのような施設的用途にも使用されるとの認識はない。後で問題となることはないか。
専用部分の用途に変更があるわけではないが、現入居者からは、建物全体の環境的側面からは契約当時の条件と現在とで異なるとして、貸主の物件の目的に従って使用させる義務違反及び契約違反を指摘されることが考えられる。質問のような契約をする場合には、既存の入居者にも理解を求めるとともに、建物内の居住利用ルールをより徹底しておくことが大切ではないか。
建物全戸を借りる場合の提出書類は各部屋に応じて用意すべきか
22戸ある建物につき、ある法人が全戸を借りうけることとなった。当該法人と賃貸借契約を締結する場合、当該法人の資格証明書(現在事項証明書)及び印鑑証明書を22通準備する必要はあるのか。
それぞれ1通あれば十分であり、法律的にも問題はない。
賃貸物件を売却する際に注意すべき事 (借主の属性)
賃貸物件の売却に係る問題。買主は、借主が暴力団関係者ではないかと疑念をもっており、調べたところ、明確にそのような事実はないが、やや粗暴な行動をする人物であることが判明した。このような事情を売買時に買主に情報提供しなけらばならないか。情報提供しない場合、後から責任が問われることはあるか。
買主が物件購入の決定に係る重要な事実として借主の属性を挙げており、業者として知り得た情報がある以上、宅建業法47条に基づき情報提供すべきである。その上で、買主の判断にゆだねることになる。この点が不十分な場合、宅建業法47条違反や、それに基づく民事上の責任があったとして、訴訟リスクを抱えることになるので注意が必要である。
抵当権設定された建物の賃貸借契約における注意 (説明義務違反による競売)
抵当権が設定されている建物の賃貸借契約の仲介をした後に当該建物が競売に付されて、第三者が競落した。この場合において、仲介業者が当該賃貸借建物の仲介の際に当該建物に抵当権が設定されていることを説明していなかった場合、当該業者は損害賠償責任を負うのか。
「当該(中略)建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人(以下略)」は重要事項の説明事項である。(業法35条)。したがって、賃貸借契約時に抵当権実行の現実的可能性があった場合、当該借主に損害が生じたときには、当該業者は損害賠償責任を負う事となる。
地方自治体の条例を確認せずに媒介したことによる損害の責任は
古い木造3階建ての物件(店舗)の賃貸を媒介したが、現在の条例のもとでは3階部分は店舗として利用できないとの指摘が行政からなされた。媒介に際して条例まで確認しておらず、当該制約につき重要事項説明をしていなかった。この場合、媒介の立場に法的責任は生じるのか。
宅建業法35条以外の事由でも、あらかじめ店舗として利用することを前提で賃貸借を媒介する際には、当該目的に利用することにつき法律上の制約の有無があるかどうかを条例レベルまで含めて調査し説明する義務があるとする判例がある。したがって、本件についても法的な責任は発生しうる可能性が高いといわざるを得ない。
貸主が風営法違反の容疑で逮捕された事実は重要事項説明・告知の必要はあるのか。
質問の事実は、宅建業法35条中には規定がなく、また賃貸借契約の目的たる建物に関する事項でもないことから、当該事実は説明・告知義務を負う事実はなく、借主から当該事実の有無に関心が示された場合以外は、借主に対し、重要事項説明・告知する必要はないと考える。
未成年契約における注意点
16歳の未成年を借主とする契約をすることになった。どのような点に気をつければよいか。
親権者(通常は両親)を代理人として契約すべきである。(親権者の同意を得る方法もあるが、それも書面で同意を得るべきであるから、代理人として契約する方が簡便である。)